[佐藤ひと美のスイーツレポート154]地球上でまだ光を当てられていない素材にフォーカスした「地球料理-Earth Cuisine-」の取り組み。《カカオ》デザートとドリンクのペアリングイベント『LIFE OF CACAO』

2022年3月14日(月)。1日限りの【ホワイトデー限定イベント】として新宿御苑の温室にて2部制 『LIFE OF CACAO』が開催されました。

株式会社LIFULLが取り組んでいる地球上でまだ光を当てられていない素材にフォーカスした「地球料理-Earth Cuisine-プロジェクト

▶「地球料理 -Earth Cuisine-」:https://table.lifull.com/earthcuisine/

プロジェクト第一弾でフォーカスした素材は、日本全国の山や森で問題となっている「間伐材」。

世界有数の森林国、日本。

特にその4割を占める人工林は、定期的な間伐が必要です。

しかし、近年の需要低下により十分な間伐が行われず、太陽光が不足し、環境悪化が続いています。

そこで辿りついたのは「食べる」という新たな選択肢。

間伐材に、食材という需要を生み出すことで、この問題における持続的な解決策を模索するとともに、

これからの私たちの生き方を考えるテーマ性から、2018年10月「Eatree Plates」から始まり、2019年3月からは間伐材を使用したパウンドケーキ「Eatree Cake ~木から生まれたケーキ~」を発売。

そして2019年9月、第二弾のテーマは「竹害」。

全国各地で「放置竹林」が増加し社会問題となりつつある「竹」にフォーカスした「Bamboo Sweets -竹害から生まれた和菓子-」を発表。2020年2月からは原料に福岡県にある放置竹林の竹と笹を 約24%使用した、これまで世界になかった竹を味わい尽くす「Bamboo Galette(バンブー ガレット) -竹害から生まれたガレット-」を発売。

全国に広がる放置竹林の現状を伝え、放置竹林を「食べる」という新たな用途を開発することで、日本の森林、そして地球を守る取り組みの一助になりたいと考え進められています。

2021年4月のプロジェクト第三弾は、『チョコレート危機』として危惧されている社会問題に対し、カカオの廃材から生まれた新しいチョコレート「ECOLATE」を販売。

世界中で愛されるスイーツのひとつチョコレートですが、長年にわたり生産体制と環境への配慮が十分になされておらず、近年においてはカカオの国際相場の低迷もあり、生産者であるカカオ農家の貧困問題は深刻。

この開発プロジェクトでは、虎ノ門ヒルズ内にある、料理人と社会をつなぐ新時代のキッチン〈Social Kitchen TORANOMON〉シェフパティシエ 江藤 英樹 氏、上妻 正治 氏とタッグを組み、一般的にチョコレート製造で用いられるカカオマスやココアバターを使用せず、通常廃棄されてしまうカカオ豆の殻、枝、葉を使用することで計2品のサスティナブルで新しいチョコレート「ECOLATE」2種を開発し、ECサイトにて販売中です。

https://table.lifull.com/earthcuisine/ecolate/

LIFULL 地球料理 – Earth Cuisine – LIFE OF CACAO カカオの一生に寄り添い、味わい尽くす。新しいデザートとドリンクのペアリングコース。」

《カカオ》にフォーカスしたデザートとドリンクのペアリングイベントとして、開催された『LIFE OF CACAO』。

『LIFE OF CACAO』開催の背景には、長年チョコレートをはじめカカオを原料とする商品の生産体制と環境への配慮が十分に行われていなかったことや、近年においてカカオの国際相場の低迷もあり、生産者であるカカオ農家の深刻な貧困問題があります。

そのようなカカオを取り巻く社会課題に目を向け、7割が廃棄されているとされる「カカオの廃材」に新たな「食材」としての価値を与えることで、カカオを取り巻く環境を見つめ直し、人間本位の「美味しさ」だけではなく、地球環境という傘のもと生産者、消費者などのあらゆるステークホルダーが「幸せ」を見付けられる持続可能でありながら『新しいおいしさ』を提案。

普段、チョコレートをつくる際に廃材となる「カカオ豆の殻」「カカオの枝」「カカオの葉」「カカオパルプ」などを含めたカカオ素材全てを活用したシェフパティシエ 江藤 英樹 氏によるデザートと、コーヒーコンサルタントとして世界的に活躍しているバリスタ 井崎 英典 氏が『LIFE OF CACAO』のために特別に考案したレシピで至極のペアリングを実現してくれました。

LIFULL 執行役員CCO:川嵜 鋼平 氏(左)、シェフ パティシエ 江藤 英樹 氏(中央)、バリスタ 井崎 英典 氏(右)

7割が廃棄されているとされる「カカオの廃材」に新たな「食材」としての価値を与え、カカオの一生に寄り添い、味わい尽くすコース内容。

  1.  誕生
  2. 根づき
  3. 息吹
  4. 実り
  5. 還元

LIFE OF CACAO1品目:誕生

カカオニブとカカオ豆の殻で香りづけしたブランマンジェにカカオパルプのジュレを乗せて。

カカオの一生をよりおいしく味わえるよう、チョコレートの原料である「カカオ」の実の中に入っているカカオ豆を包むふわふわの白い果肉部分:カカオパルプを使用したジュレをかけたデザートに、爽やかな酸味と甘さを加えた食前酒のような一杯を添えて、命の芽生えを祝福。

LIFE OF CACAO2品目:芽生え

カカオニブとカカオ豆の殻による濃厚なムースショコラに、枝を模したチョコレートに枝のパウダーを塗した香ばしく深い味わいを感じ取るひと皿。

チャフや枝の香ばしさ、カカオニブの甘味、ジャスミンのタンニンがハーモニーを奏でる奥深い一杯を添えて。

LIFE OF CACAO3品目:息吹

カカオの葉を用いたテリーヌに、アイスクリーム、クランブル。盛り付けも葉を連想させるアート性と、森の香りや食感を舌に感じるひと皿に仕上がっています。

葉の爽快感と、ミルクのほのかな甘味がマッチする葉っぱのラテを添えて。

耳をすませば、カカオの呼吸が聞こえるようなペアリングでした。

LIFE OF CACAO4品目:実り

カカオパルプのソルベよシャンティから広がる酸味、カカオニブとカカオ豆の殻の芳醇な香りに、埼玉県産 苺「あまりん」とラズベリーを織り混ぜ、果実のようなみずみずしい味わいが花咲くように演出。

カカオ豆の殻によるコンブチャの香ばしさと、ローズヒップを思わせるカスカラを味わえる一杯で、デザートの魅力を引き立てます。

LIFE OF CACAO5品目:還元

プロジェクト第三弾で登場した、一般的なチョコレート製造で用いられるカカオマスやココアバターを使用せずに、カカオ廃材を使用したまったく新しいひと口チョコレート「ECOLATE CARRE」から、カカオ豆の殻、枝、葉 含有量30%の素材を使用し仕上げられたチョコレートは、農園を彷彿とさせるような味わいと食感を奏でる。

さらに、深みのあるコーヒーで、大地の香りを吹き込み、地へ還り、また新たな芽が生まれる命の力強さを感じるペアリングのクライマックスへ。

−−−シェフ パティシエ 江藤 英樹 氏のコメント

「Earth Cuisine」は、食べることが地球のためになり、新たな食材の可能性を探るためのサスティナブルなプロジェクトです。 

今回のイベントの食材であるカカオ廃材を使ったデザートを作るのはとても難しいチャレンジでした。カカオ豆以外の素材を主役にして、味や香り、食感のバランスをどう取るか。また、それらをデザートとしておいしいと思っていただきつつ、その先にある社会課題を考えるきっかけにし、意味のあるものにするにはどうするかといったことも考えました。そこで、僕はカカオ豆ができるまでの植物の生命力、豆以外の素材に着目しました。イメージしたのは、今まで使われていない部位を食材に変えることで『カカオの新しい生態系』をつくることでした。イベントではカカオの一生を見守る様な気持ちで全5品のコースを表現し、チョコレートを作る時に70%も廃棄されるというカカオの廃材に”食材”としての価値を見出せたのと同時に素材の今後の可能性を感じることができました。

−−−バリスタ 井崎 英典 氏のコメント

私が今回お話をいただいてどんなものを創ろうか構想した結果、Earth Cuisineの「食べることが地球のためになる」という精神性を継承したドリンクにしようと思いました。

よって、カカオの廃材だけでなく、コーヒーの廃材も織り混ぜてドリンクを作っています。またコーヒーにおけるサプライチェーンで最もカーボンフットプリントが重いとされているのが「お湯を沸かす」行為なので、今回ご提供するドリンクは全てコールドブリュー(水出し)の手法を使ってサスティナブルに仕上げています。また、サスティナブルなフードに本気で取り組むときに欠かしてはいけないのは、 “美味しく”いただくということです。これが私の使命だと思いレシピ開発に取り組みました。

廃材の個性を活かしながら、甘さやエグみのバランスを取り美味しさを追求しました。その深みでカカオの社会課題を受け取り、チョコレートというものを考え直すパラダイムシフトになったら嬉しいですね。

−−−LIFULL CCO執行役員 川嵜 鋼平 氏のコメント

LIFULLは、事業を通じて社会課題解決に取り組むソーシャルエンタープライズです。

社会課題を引き起こす素材に「食べる」という新たな可能性を見い出すことができれば、より持続可能な社会を叶えることができるのではないかと思い、2018年に「地球料理 – Earth Cuisine -」を立ち上げました。

その根幹にあるのが、今までの人間が定義した”おいしさ”ではなく、「あらゆるLIFEがFULLになる、おいしさ」。それは、一般生活者はもちろんのこと、シェフ、生産者、自然環境、さらには地球を含めた全方位が幸せになれる”新しいおいしさ”を追求するということです。

第三弾は、チョコレートを取り巻く様々な社会課題の原因となっている「カカオ農家の貧困」の解決に取り組み、その解決の糸口として目を付けたのが”カカオの廃材”です。

今回、カカオの木も栽培されている新宿御苑の温室で、まるでカカオ農園にいるような環境で、カカオが芽生え・根付き・息吹き・実り・還元していくカカオの一生を、カカオの全てを用いて表現することで、五感で味わう”新しいおいしさ”を体験いただくことが出来たのではないかと思います。

今後も、生活者やシェフ、生産者の間で、”カカオの廃材”が当たり前のように広く使われるよう活動を継続していくことで、社会課題解決に取り組んでいきたいと思います。

実際に、LIFULL 地球料理 – Earth Cuisine – 「LIFE OF CACAO カカオの一生に寄り添い、味わい尽くす。新しいデザートとドリンクのペアリングコース。」を体験させていただいて。

チョコレートだけでなく、私達が食べる機会も多いカカオ豆の『ニブ』や、この数年で市場を賑わせた『カカオパルプ』以外にも、本来捨てられてしまうというカカオの廃材でも幾千に可能性を秘めている。

それを改めて考えるタイミングと、題材になることを教えてくれた「ECOLATE」の取り組み、そこからポテンシャルを見極め、引き出すことに成功させたシェフパティシエ 江藤 英樹 氏に感謝する時間でした。

また、開催場所である新宿御苑の大温室では環境省が所管する環境配慮型温室として、世界各地のジャングルや池沼、山地、乾燥地のほか、日本国内における亜熱帯地域である小笠原諸島や南西諸島といった環境テーマごとに、さまざまな植物を およそ2,700種 栽培されています。

日本の洋ラン栽培の発祥の地とも言われているので、戦前の古い品種から独自品種の「レリア シンジュク」なども展示されているほか、木の幹から直接実が出る植物のエリアに「カカオノキ」も栽培されているのでラグビーボールのような形をした小ぶりなカカオの実も見ることができ、良い体験をすることができました。

ペアリングコースは1日限定でしたが、《5.還元》で提供された廃材であるカカオ豆の殻、枝、葉から生まれた新しいひと口チョコレート「ECOLATE CARRE」は、オンラインからでもご購入頂けるので、是非試してみてください!

「ECOLATE」について

チョコレートの主原料となるカカオマスは、カカオポッドの中から採取されるカカオ豆から作られ、残りの約70% のカカオ素材は廃棄されています。

そのカカオ廃材に着目し、一般的にチョコレート製造で用いられるカカオマスやココアバターを使用せず、廃棄されるカカオ豆の殻、枝、葉から生まれた新しいチョコレート「ECOLATE」が開発されました。

長年、チョコレートをはじめカカオを原料とする商品の大量生産・消費、価格低迷を背景に、カカオ農家の多くは貧困状態にあり、カカオを取り巻く環境は複雑かつ深刻な社会問題となっています。

また、その需要故の生産地拡大による環境破壊、地球温暖化に伴う気候変動やカカオ樹の老齢化、カカオ樹が罹る病気の脅威も相まってカカオ不足は深刻な状況です。

そのようなカカオを取り巻く社会課題に目を向け、7割が廃棄されているとされる「カカオの廃材」に新たな「食材」としての価値を与えることで、カカオを取り巻く環境を見つめ直し、人間本位の「美味しさ」だけではなく、地球環境という傘のもと生産者、消費者などのあらゆるステークホルダーが「幸せ」を見付けられる「新たな美味しさ」を提案し続けるプロジェクトです。

Eatree Cake ・ Bamboo Galette ・ECOLATE 販売サイト: https://table.lifull.com/

今回は、地球上でまだ光を当てられていない素材にフォーカスした「地球料理-Earth Cuisine-」の取り組みから、《カカオ》にフォーカスしたデザートとドリンクのペアリングイベント『LIFE OF CACAO』の取材レポートをご報告させていただきました。

ニュースや新聞などでよく聞くようになった『SDGs(持続可能な開発目標)』。

その認知度は確実に高まっているものの、どのような取り組みが行われているのか、また自分で取り入れることのできるものはどんなものがあるのか。

まずは、「地球料理-Earth Cuisine-」の取り組みを是非知って、取り入れ体感して、地球環境・社会環境へ関心を持つキッカケにつながっていったら。と思います。

次回は、GINZA SIX 5周年記念の素敵なラインナップを取材してきたのでご紹介できたらと思います。

お楽しみに!!