“さいたまスイーツバル”にみるスイーツ×地域活性のヒント

地域活性化の施策にスイーツを取り入れている自治体は多い。ご当地スイーツのPR、商品開発などさまざまな取り組みがある中で、さいたま市が2014年より実施しているのがスイーツに特化した街バル“さいたまスイーツバル”だ。“さいたまスイーツ”のブランド化に寄与したこの企画の仕掛け人に、スイーツを通した地域活性のヒントをお聞きした。

写真:立川賢一

■インタビューを読む前の予備知識

さいたまスイーツバル……2014年よりさいたま市が主催しているスイーツに特化した街バルイベント。“さいたまスイーツ”をブランド化することで、個店の消費を促し、地域経済を活性化させることを目的としている。1回目はJR浦和駅周辺、2回目はJR大宮駅周辺で開催。今年は2月27日(土)・28日(日)に開催される。エリアが拡大され、遠方の参加店にはさいたま市コミュニティサイクル(レンタサイクル)の活用を提案している。(イベント詳細はコチラ

さいたまスイーツバル……2014年よりさいたま市が主催しているスイーツに特化した街バルイベント。“さいたまスイーツ”をブランド化することで、個店の消費を促し、地域経済を活性化させることを目的としている。1回目はJR浦和駅周辺、2回目はJR大宮駅周辺で開催。今年は2月27日(土)・28日(日)に開催される。エリアが拡大され、遠方の参加店にはさいたま市コミュニティサイクル(レンタサイクル)の活用を提案している。(イベント詳細はコチラ

街バル……地域の活性化と飲食店の集客支援を目的として開催されているグルメイベント。参加者は数枚つづりになっているチケットを購入し、街バル参加店舗でチケットとドリンクやフードなどを引き換え、食べ歩き、飲み歩くというもの。

■話をお聞きした人

左から、齋藤聖名美さん(さいたま市経済局商工観光部商業振興課・主事)、松本裕之さん(同左・主任)、村田婦佐子さん(株式会社ぱど・広域プロデューサー)。


 “さいたまスイーツ”ブレイクの舞台裏

――さいたま市主催で現在“スイーツバル”などを実施していますが、地域振興にスイーツを取り入れたきっかけは何ですか?

松本「さいたま市では、地域資源を活用しブランド化を進める事業を行っており、平成21年度から23年度にかけて旧岩槻市のB級グルメの『豆腐ラーメン』や『岩槻ねぎ』などのPR、『大宮盆栽だー!!』という地サイダーの開発などを行ってきました。スイーツは、平成23年に実施した、さいたま市10区の“区の花”をモチーフにしたスイーツを開発した事業が始まりで、これが意外とヒットしたんです」
 

――ヒットする土壌はあったのでしょうか?

松本「さいたま市内、特に旧浦和市は平成21年の家計調査で菓子類の支出金額が首都圏の大都市の中で最も高く、もともとスイーツへの関心が高かったという背景もあり、平成24年度に“さいたまスイーツプロモーション事業”を実施し、さいたま市内でしか買えない、食べられないスイーツを“さいたまスイ―ツ”と定義して、スイーツ情報を集め、パンフレット作成やホームページでPRしました」

――平成25年度には第1回目となる“さいたまスイーツバル”を開催されたわけですが、バル形式のイベントをされた理由は何ですか?

松本「商店街には、“三種の神器”と呼ばれる活性化事業があります。一つ目が、100円でできるサービスを提供する『100円商店街』。二つ目は、おいしい魚の選び方講座のように、個店さんに専門知識を教えてもらう『街ゼミ』。三つめはチケットを買ってもらって、ワンドリンク、ワンフードを飲み歩きしてもらう『街バル』です。これは全国的にヒットしています。
(1回目の開催地となった)浦和は有名なスイーツ店があるので、スイーツに特化したバルができるのではないかいうことで、地域情報誌の『ぱど』さんに企画を提案していただき実施したのが“さいたまスイーツバル”です。初めての開催なので『ぱど』の村田さんはお店集めで苦労されたと思いますが、おかげさまで大ヒットしました」

村田「浦和で核となるお店さんに出ていただけたことは勿論、多くのスイーツ店さんにご参加いただけたことで、続く大宮での開催もうまくいったのだと思います」

――チケットはどれくらい販売されたのですか?

松本「第1回目はチケット販売数が1,543冊です。行列ができすぎてパンクしてしまったお店さんもありましたが、プロモーションとしては一役買えたかなと思っています。
これまでは、ポスターやチラシ、市報などの紙媒体を中心にPRしていましたが、スイーツ好きは若い方が多いので、ツイッタ―やフェイスブックも活用しました。お店紹介も定期的に発信したため、ホームページのアクセス数や来店数も増え、宣伝効果も高かったようです」
 

齋藤「私は商業振興課に配属される前からスイーツバルのことは知っていたので、まさか間近で関われるとは思ってもいませんでした。そのときはA5サイズのチラシが家にあって知ったのですが、実際にツイッタ―を見てチェックし、母にこういうのがあると拡散をしました(笑)。そういうクチコミの流れも大事なんだなと、ここにきて思いました」

村田「オープン30分前には行列ができているお店もありました。洋菓子店・和菓子店関係なく、こんなにたくさんのお客さまに来ていただいたのはお店始まって以来、とおっしゃっていました。お祭り感がありましたね。期間中はたくさんの人が浦和に来ていただけたので、スイーツ店以外の商店街の方にも喜んでいただけました」

松本「商業振興課の“さいたまスイーツ”を通した商業の活性化としては、個店に足を運んでもらうことがメインです。一カ所に人を集めるイベントも効果はあるのですが、直接店舗に足を運んでもらったことが功を奏したと思います。本来街バルは、もっと狭い範囲で、短期間で人を集めるのが効果的といわれています。今回のスイーツバルは街バルのイベントとしては範囲が広すぎるのですが、アルコールを提供しないので自転車で移動することも可能です」

村田「バルメニューの確認のために、イベント開催前に新しいお客さんがお店に足を運ばれることも多いそうです。また、イベント時はお客さんと会話するなどコミュニケーションが活発になるとか、あとバル以降も来店者が増えたなど、参加店さんからうれしい声を頂きました」

――イベント時のコミュニケーションがリピーターを生むきっかけになっているのですね。参加者の年齢層はどうですか?

村田「30代、40代女性が一番多かったですが、年齢層は幅広いですね。スイーツ男子もいて、男の子2人で生ケーキをほおばる姿も見られました(笑)。また、スイーツバルは母娘や3世代で参加する方もいらっしゃって、飲み屋さんを対象とした街バルとは動く層が違うことを体感しました」

――他にも何か違いはありましたか?

村田「通常の街バルではチケットの未使用率は10~15%くらいですが、スイーツバルは2年連続で5%以下なんです。期間中は混んでいるので、“あとバル”を狙って来店する人もいらっしゃるそうで、ほぼ使われています。ちなみに、あとバルとは、イベント時に使いきれなかったチケットを、後日1枚500円相当の金券として使用できたり、バルメニューと交換できたりする手法の一つです」

――参加店はチケットを換金するわけですから、使用率が高いのは魅力的ですよね。ちなみに出店料はいただいているのでしょうか?

松本「無料です。みなさんやる気を出して参加いただいているのはこちらも嬉しいです。イメージとしては、宇都宮は餃子、浜松はウナギのように、『さいたまはスイーツ』となれたらいいなと思っています。ブランド化は、ある程度年数を掛けなければ定着しないところがあると思います。今までは駅周辺でしかできませんでしたが、今回の自転車を使ったスイーツバルの結果次第では、別のことができるのではないかなと思っています」

村田「このようなイベントに参加する場合、スイーツ店さんにはいくつか課題があります。スイーツは単価が安いこともあり、販促費をなかなかかけられない。一カ所に集まって販売するイベントの場合は人を出せない。自分たちだけでイベントを実施するのも難しい……。私はスイーツバルでは店舗集めをしているのですが、『これだけの規模でさいたまスイーツを大々的に市としてPRする機会はないのでこのイベントは参加しないとだめですよ』と話をするんです。

少し大変かもしれないけれど、参加してみることで抱えている課題の克服につながるかもしれない。そうすると、今度は『イベント当日いっぱい人が来たらどうするか、次はどんなものを出そうか」という話になっていくんです。スイーツバルはそこを担っているんだなと思います。今回はメインエリアから離れているお店さんは、お客さんに来てもらえないんじゃないかっていう話が多かったんです。確かに遠いとお客さんは少ないかもしれませんが、参加することでPRによりさいたまスイーツとして露出につながります。さいたま市さんは“さいたまスイーツ”のブランド力向上という目的でこの事業を進めているんです、だったらやってみましょうよ、と。スイーツバルは、本当に商業活性化のきっかけを作ってくれる例なんだなと思います」

――最後に「第3回さいたまスイーツバル~自転車deスイーツバル~」の見どころをお願いします。

松本「去年は大宮駅周辺でやりましたが、今回は自転車を使うことでエリアが広がり参加店舗さんが増えています。地元にもおいしいスイーツ店さんがたくさんあることを知ってほしいです」

 
“さいたまスイーツバル”がスイーツイベントとして成功できたポイント

■さいたま市にはスイーツ店がとにかく多い!
街バルは、徒歩圏内のエリアに参加店舗が集積していないとイベントとして成り立たない。さいたま市はスイーツ店が多く、第1回目の浦和では駅周辺の1.5キロ圏内で27店舗、第2回目の大宮では800メートル圏内で20店舗が参加した。

■スイーツ店がエリア内に集中しているため、街バル形式がマッチ!
一つの会場で複数の出展社が集まるイベントの場合、店舗側は会場にスタッフを派遣しなければならない。街バルの場合はチケットを持ったお客さんが来店してくれるので、参加する店舗側の負担が少なくて済む。結果として、イベントに参加できるスイーツ店が増えた。

 
第3回さいたまスイーツバル概要

開催日:  2016年2月27日(土)・28日(日)
チケット販売期間: 2016年1月30日(土)~2月21日(日) 
チケット販売場所: 一部バル参加店舗(店舗一覧参照)
          コワーキングスペースoffice7F
チケット価格: 1,500円(1冊3枚つづり)
U R L:  http://www.saitamasweets.com/
      https://www.facebook.com/saitamasweets
問い合わせ:さいたま市商業振興課
      TEL 048-829-1364(土・日・祝除く9:00~17:00)