※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。
安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。長きにわたる充電期間を経て、いよいよシーズン2をスタート。みなさんのおすすめスイーツを実食して、エッセイ風食レポに挑戦!
今回安孫子さんがいただいたのは、 スイーツとワインのセット「La・Pair(ラ・ペア)」 。
第23回 スイーツとワインのセット「La・Pair(ラ・ペア)」をいただく
「初めての体験」は、人に新たな価値観を生み出してくれる素敵なものだ。
だが、その数は生まれてから不可逆的に減り続ける。
歳を重ねるほど、その数はどんどん少なくなっていく。
あなたは最近、いつ「初めての経験」をしましたか?
サン・タムール
かの有名なワインの産地、ボジョレーのワイン。
毎年日本で話題に上がるヌーヴォー(新酒)ではなく、熟成された2018年のものだ。
原料となる葡萄はガメイという品種。イチゴやラズベリーなど赤いベリーを思わせる香りを特徴としていて、フルーティーで軽やかなライト〜ミディアムボディのワインが生み出されるという。
まずはラベルを切り、コルクを抜く。
僕はコルクを抜く瞬間が好きだ。
瓶の内側にはワインと共にその”時”が閉じ込められていて、コルクを抜く事で今は過去になったその”時”に触れることができる。そんなロマンを感じずにはいられない。
「聖なる愛」という名前から、若い恋人達の間で人気があるというこのワインを僕は一人、グラスに注ぐ。
甘く、豊かな香りに胸が高鳴る。
口にすると、瑞々しさの中にしっかりとした深い味わいを感じた。ヌーヴォーのフレッシュなものとは違う、フルーティーではあるがどこか落ち着いた気品の様なものがある印象だ。
さあ、この芳醇なワインがスイーツと出会う事でどんなマリアージュを生み出すのか。
片手にはワイングラス、目の前には美味しそうな2種類のスイーツ。
僕の”ちょっと特別な時間”が始まった。
ショコラとクリームチーズ
白いキャンバスに描かれた、抽象画の様な美しさに触れるのが憚られるが、「ショコラとクリームチーズ」という、必ずや美味しいであろう組み合わせの魅力に抗えず、フォークを入れて一口。
濃厚なショコラの味わいとクリームチーズの優しい酸味、時折訪れるドライフルーツの香りが食べていて楽しい。
そして何気なくワインを口にした瞬間、僕は驚いた。
先程の印象とはまるで違うのである。赤ワインがまるでジュースかの様にスルスルと入ってゆく。
ガトーショコラだ。ガトーショコラの濃厚な甘さと食感がそうさせるのだ。
そして、乳製品には苦味物質の吸着を阻害する作用がある。表面のクリームチーズがワインの苦味を感じづらくしてくれている。結果、酸味が際立ちフレッシュジュースの様な味わいに感じるということだろう。
流石、ワインに合わせるためだけに考案されたスイーツ。スイーツ一つでこれだけ見事にワインの味わいを操作してしまうなんて、恐るべき緻密な計算である。
それにしても飲みやす過ぎてグラスを傾ける手が止まらない。ああ、恐るべし恐るべし。
変わりベイク&バター
このままではワインを飲み切ってしまうと、慌てて「変わりベイク&バター」に手をつける。
口に入れた途端、紅茶の豊かな香りとライチリキュールの華やかな甘い香りが広がる。
ワインに合わせることを意図したであろう濃い味わいに、やはりすぐグラスを口に運んでしまう。
するとどうだろう、ただでさえ口中に広がる豊かな香りに、ワインの香りのマリアージュ。大変だ、僕の鼻腔がとっても幸せである。
表面にコーティングされたカシスゼリーと可愛らしくあしらわれたレーズンが葡萄から作られるワインとの親和性を高めてくれる。そして何層にも重ねられた様々な味わいは、一つのスイーツをおつまみとして飽きることなく楽しませてくれる。
気づけば僕は少し顔が赤くなっていた。
これはアルコールによるものなのか、スイーツとワインの魅力に当てられて熱ってしまったのか。きっとその両方だろう。
同封されていた紹介カードに目を落とす。
そこには
“お届けしたいのは「はじめての経験」”
というメッセージが書いてあった。
その文字通りの経験をして、僕はワインとスイーツがこんなにも相性が良いと初めて知った。
その日は、ちょっと特別な1日になった。
商品情報
日本ソムリエ協会認定「ワイン・エキスパート」、日本スイーツ協会認定「スイーツコンシェルジュ・アドバンス」の資格を持ち、2016年よりスイーツとワインのイベント・セミナー事業を行ってきた 「京都より、お菓子とワインの世界」代表の 林典子氏が考案したセット。 スイーツは京都の人気店「メゾン・ド・フルージュ」が手掛けている。
購入は公式サイトから(↓)
※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。