京都・東山の裾野、岡崎公園にあるフランス焼菓子店「菓子店千茜(かしてんちせん)」。南禅寺や平安神宮、哲学の道近くの住宅街の一角で、店主の村瀬佳子さんが一人で切り盛りされている小さなお店です。今回出版された『京都 菓子店千茜 香るフランス焼菓子』では、定番からスペシャリテまで、家庭で作れる「菓子店千茜」のレシピを初公開。「もっとおいしく作るには?」といつもワクワクしながらお菓子づくりをしているという村瀬さんの、おいしさが香ってくるようなレシピや趣のある文章が魅力的な1冊です。屋号の由来や、取り組まれているアトリエ活動についても語ってくれた村瀬さんのインタビューを、どうぞお楽しみください。
Profile 村瀬佳子
1978年京都生まれ。日本とフランスの製菓材料企業でのプランナーを経て、2015年、京都岡崎に「菓子店千茜」をオープン。ひとりで店舗を切り盛りする傍ら、菓子教室や味覚教室、子どものためのアトリエ活動を行う。
生産者とのつながりを大切に、素材ひとつひとつにこだわり、しあわせの香りが口いっぱいに広がるような菓子と料理、食べることのたのしみを提案する。
菓子店千茜
京都府京都市左京区岡崎天王町53
chisen.main.jp/
――村瀬さんがお菓子づくりをされるようになったきっかけを教えてください。
村瀬「小さな頃から食べることが大好きで…。生粋のくいしんぼうです。でもじつは、作ることにはまったく興味がなくて、本格的に料理や製菓を始めたのは、大人になってからです。留学先のフランスで調理のたのしみに開眼し、生来の探求心から『もっとおいしく作るには?』を、さまざまなアプローチで研究するようになりました。当時、大学の図書館で夢中になって読んだ製菓の科学解説書から得た知識や、本場のレストランやパティスリーでのスタージュ経験(修行とは名ばかりの味見係です)が、今につながっています」
――「菓子店千茜」について、屋号の由来やお店の特徴などを教えてください。
村瀬「2人で満員、5人で行列の小さな店舗です。材料の仕入れから製造、接客まで、ひとりで切り盛りしています。屋号の『千茜』は、祖母の俳号を受け継いだもの。日々のよろこびを俳句に綴り、いつも笑顔で周囲をなごませた祖母のように、毎日の暮らしがちょっとたのしくなるようなお菓子を作りたいと思ったのが、菓子店千茜の原点です」
――料理人やスイーツ通からも一目置かれている話題の「菓子店千茜」。村瀬さんがこだわっていること、大切にしていることなどを教えてください。
村瀬「ひとつひとつの材料を吟味して選び、よりよい製法を追求して、この規模でしか作れないお菓子を、たっぷりの愛を込めて届けていきたいと思っています。仕入れた果物はひとつひとつ味を見て選果し、最適の方法で調理する。たとえば桃は、生のまま使わずに、まずシロップ煮にしてからオーブンで焼いてセミドライにしたものを生地に焼き込むなど、手間はかかりますが、おいしさを生み出すためにやりすぎということはないんじゃないかなと。きっとこれも、くいしんぼう魂のなせる業ですね」
――今回発売された『京都 菓子店千茜 香るフランス焼菓子』では、いちじくやレモン、マロンやローズなど、魅力的な素材を使ったレシピが多数紹介されています。本書を出されたきっかけ、本書の楽しみ方について教えてください。
村瀬「本書では、素材それぞれの個性を活かし、食べたあともずっとおいしい余韻が漂うお菓子をご紹介しています。フランス菓子の定番・モンブランを焼菓子に変身させたり、バラ科の果実をたっぷり使って生菓子のようなみずみずしいケイクを焼いたり…。ひと味ちがう焼菓子をおたのしみいただけたら、しあわせです。お客さまに『作ってみたい』と言っていただけるのは、お菓子に対する最高の賛辞だと思うので、レシピも製法も包み隠さず公開しました」
――村瀬さんの最近の活動や力を入れられていることについて教えてください。
村瀬「食べることのたのしさや大切さを多くの方と分かち合いたいとの思いから、各種のアトリエ活動を行っています。たとえばお菓子教室では、単にレシピを説明するだけでなく、素材の選び方についてお話ししたり、子どもたちのための味覚レッスンなども催しています。同じ名前のつく果物でも、産地や育て方によって『こんなにも!』と驚くほど味が違うことがありますが、そんな体験をたのしく共有できたらと思っています」
――村瀬さんがこれから挑戦してみたいこと、興味があること、作ってみたい本などあれば教えてください。
村瀬「いつもすばらしくおいしい卵や果物を届けていただく農家さんを訪ねて、素材についてもっともっと勉強したいです。また、本書を片手に全国行脚してお菓子教室ができたら…と考えています」
――最後にスイーツファンに向けて、メッセージをお願いします。
村瀬「『京都 菓子店千茜 香るフランス焼菓子』には、砂糖の甘さでごまかさず、素材の風味をぎゅっと閉じ込めた焼菓子のレシピを集めました。何度も試作をくり返して、できるだけおいしく、できるだけ失敗しないように考えた作り方やコツをご紹介していますので、「作って、食べて、お菓子はたのしい!」と思っていただけたら、うれしいです」
『京都 菓子店千茜 香るフランス焼菓子』
著者:村瀬佳子
出版社:世界文化社
発売日:2017年11月18日
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