
2025年8月8日、東麻布の閑静な一角に、新たな旋律を奏でるパティスリー「pâtisserie ondine(パティスリー オンディーヌ)」が誕生します。
店名は、ラヴェルのピアノ組曲『夜のガスパール』より、水の精「オンディーヌ」に由来。オーナーシェフの宮地弘毅氏と、クラシック音楽に造詣の深いオーナーパティシエール劉優華氏が、フランス菓子の伝統を大切にしながらも、枠にとらわれない自由な発想で、まるで音楽を五感で味わうような感動を生み出します。
二人の才能が織りなす、唯一無二の世界観
「pâtisserie ondine」は、異なる背景を持つ二人の才能によって形作られています。

オーナーシェフの宮地 弘毅氏は、北海道釧路で洋菓子店を営む父の影響を受け、幼い頃からパティシエを志しました。札幌の「Pâtisserie SHÏÏYA」にて椎谷宏一シェフに約6年間師事し、フランス菓子の基礎を徹底的に築き上げます。上京後、フランスMOF(国家最優秀職人)パティシエ、アルノー・ラエール氏のブランド「ARNAUD LARHER Japon」に入社。わずか1年でエグゼクティブシェフに就任し、広尾と銀座SIXの2店舗を4年間にわたり統括しました。そこで培った確かな技術とクリエイションが、オンディーヌの土台となっています。
一方、オーナーパティシエールの劉 優華氏は、慶應義塾大学を卒業後、音楽業界でキャリアをスタート。
月刊「ショパン」の副編集長や、クラシック音楽レーベル「ナクソス・ジャパン」でCDプロデュースを手がけ、東宝映画『蜜蜂と遠雷』では音楽監修を務めるなど、長年にわたりクラシック音楽に深く携わってきました。その後、フランス菓子に魅せられ「アルノー・ラエール パリ」にてヴァンドゥーズ(販売員)からスタートし、店長を経てパティシエとしての研鑽を積みました。現在も、ピアニストの中村紘子氏や横山幸雄氏が設立した日本パデレフスキ協会の事務局長を務めています。
二人の出会いと、それぞれの専門分野が、オンディーヌのユニークなコンセプトを生み出しました。宮地氏が作る洗練されたフランス菓子に、劉氏のクラシック音楽への深い造詣が加わることで、単なるお菓子に留まらない、物語性のあるスイーツが誕生したのです。

物語を紡ぐガトー:クラシック音楽とのマリアージュ
オンディーヌのショーケースを彩るガトーは、一つひとつがクラシック音楽にちなんだ物語を持っています。

シェフ宮地氏が『僕の作るケーキの中で、かなり複雑な要素が絡み合っている』と語るスペシャリテ「ノクターン」は、夜想曲という名の通り、静かに物思いに耽る時間ではなく、家族や友人と食事を楽しむ賑やかな夜の情景を表現。

南仏の食前酒「パスティス」を題材に、ショコラ、キャラメル、アナナス、6種のスパイスが複雑に絡み合い、一口で様々な香りと味わいが広がる、まさに未体験のガトーです。
フランツ・リストの名曲に由来する「カンパネラ」は、超絶技巧を要する曲の儚さや幻想性を、ケーキで表現。

天然のマダガスカルバニラを贅沢に使ったカスタードベースの濃厚なムースリーヌは、他のケーキでは味わえない独特の口溶け。そこにチョコレートのコクと、鐘を模した鮮烈なフランボワーズのジュレが加わり、ドラマチックな味わいを演出します。
その他にも、バッハのフーガのように複数のメロディが同時に進行する様を、バジル、ライチ、グレープフルーツの3つの要素で表現した「ポリフォニー」。

シェフが「主役はバジルの生地」と語るように、爽やかなバジルの風味が、ライチの果肉入りジュレとグレープフルーツのムースによって引き立てられる、夏の爽やかな一品です。
「積み重ねる『あたりまえ』の中にこそ本当のおいしさが宿る」という信念のもと、丁寧に、誠実に作られたお菓子は、細部にまでこだわりが光ります。
中でも、ベルギーの伝統菓子『ミゼラブル』を現代風に昇華させた「ミゼラブル」は、乳製品が高価だった時代に水で炊き上げられたバタークリームの発祥を踏襲し、口溶けのスッと溶ける繊細なクレームオブールを追求。

最高級マルコナアーモンドのダックワーズと自家製ラムレーズンを合わせることで、シンプルながらも奥深い味わいを実現。
ホワイトラムが影の主役となり、バナナとブラッドオレンジ、ココナッツの3要素が溶け合う「メヌエット」など、それぞれのガトーが持つ物語を想像しながら味わう、至福の時間が流れます。

伝統を革新するヴィエノワズリーと焼き菓子

生菓子だけでなく、ヴィエノワズリーや焼き菓子にも、シェフの確かな技術とこだわりが光ります。
特に注目したいのは「シュークリーム」。

提供時にクリームを詰めるスタイルで、いつでも作りたての美味しさを楽しめます。ザクザクとした食感のクロッカン生地に、天然のマダガスカルバニラをふんだんに使用したカスタードクリームがぎっしり。濃厚でありながらも、口溶けの良さが際立つ極上のシュークリームは、シェフの技術と素材への敬意が詰まった自信作です。

修行先の「アルノーラエール」のスペシャリテを、シェフ独自の解釈で昇華させた「フラン」は、天然のマダガスカルバニラを丁寧に抽出した、なめらかでとろけるようなアパレイユが特徴。

しっかり焼き上げたパイ生地とのコントラストが絶妙で、従来のフランとは一線を画す軽やかさ。
また、「クイニーアマン」は、外側のカリッとしたキャラメリゼともっちりとした内側の食感が、バターの芳醇な香りと共に口の中に広がります。

伝統的な製法に敬意を払いながらも、配合を細かく調整することで、より洗練された味わいに仕上げられています。

シェフの故郷・北海道への想いが詰まった「クレームマイス」は、千歳の小川農場から直送される甘みの強いとうもろこし「ゴールドラッシュ」を使用。

注文後にパリッとキャラメリゼされた表面の下から現れるのは、なめらかな口溶けのアパレイユと、とうもろこしの粒。甘みと香りの豊かさが際立つ、心温まる一品です。
お菓子に命を吹き込む「お酒」という要素

シェフ宮地氏が『美味しいお菓子にはお酒というものは切っても切り離せないファクター』と語る通り、多くのお菓子に素材の風味を引き立てるためのお酒が巧みに使われています。
「ノクターン」のパスティスや「ミゼラブル」のラムレーズン、そして「メヌエット」のホワイトラムなど、控えめに、しかし確かな存在感でお菓子の輪郭を際立たせているのです。
オープンから4日間は、特別にセット商品を販売。イートインスペースも併設され、淹れたてのコーヒーとともに、五感で楽しむ音楽のようなお菓子を堪能できます。
東麻布の新星「pâtisserie ondine」
pâtisserie ondine(パティスリー オンディーヌ)
オープン日: 2025年8月8日
住所:東京都港区東麻布1-22-2
最寄り駅:大江戸線赤羽橋(出口は中乃橋口)
営業時間:10時〜18時
定休日:火・水・木
伝統と革新が織りなす感動的なお菓子の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。