[佐藤ひと美のスイーツレポート188]2023年イタリア・ミラノで開催!ティラミス世界選手権「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC」日本代表決定!!

イタリア・ミラノにて開催されているパスティッチェリア・ジェラテリア・チョコラッテリア国際連盟主催の「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC」。

イタリアンドルチェの中で最も普及しているとも言える”ティラミス”に特化した最初の世界選手権として、2年に一度開催されているケータリングとホスピタリティの世界博覧会「HostMilano」内にて2021年10月に第一回目が実施されました。

「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC 2021」に参加したのは、開催国イタリアだけでなく、ブラジル、ハンガリー、モロッコ、日本など世界中から24人のパティシエが集まり、「クラシック・ティラミス」と「イノベーティブ・ティラミス」それぞれのデモンストレーションを行いました。

結果は、優勝:フランス(Nabil Barina 氏)、銀賞:日本(Kirara Kushibiki -櫛引雲母-氏)、銅賞:スイス(Gianluca Fiorentino 氏:イタリア出身)。

イノベーティブ・ティラミス 特別賞も受賞した櫛引雲母シェフに続く、ティラミス・ワールドカップ「The World Trophy of Professional Tiramisu’ FIPGC 2023」の日本代表を決定する日本代表選考会、第1回「Gran Concorso di Tiramisu’ 2022(グラン・コンコルソ・ディ・ティラミス 2022)」の決勝戦が先日、都内にて開催されました。

Gran Concorso di Tiramisu’ 2022(グラン・コンコルソ・ディ・ティラミス 2022)

在日イタリア商工会議所のもと、初めての試みとしての実施で、2022年2月中旬〜4月21日までに開催された第一次審査(レシピと写真審査)を通過した参加者の中から、5月には第二次審査として実技審査を行い、決勝戦へ進出するファイナリスト4名を選出。

※応募資格者は、参加対象はプロのシェフ、菓子職人、ジェラート職人に限られる。

コンクールのテーマは、イタリアでの本戦同様に「クラシック・ティラミス」と「イノベーティブ・ティラミス」。

それぞれの規定は以下の通り。

クラシック・ティラミス

1)参加者は伝統的なティラミスを四角形のベーキングディッシュに入れてつくる。

2)使用していい食材は以下の通り:マスカルポーネ、卵、砂糖、サヴォイアルディ、無糖のココアパウダー、エスプレッソコーヒー

3)アルコール類など上記の食材以外を使用した場合、失格となる。

イノベーティブ・ティラミス

1)参加者は自分のティラミスに合わせた型を自由に選択することができる。

2)使用する容器はカップ(一人分)

3)ティラミスの構成はベイクドの部分と、クリームの部分が盛り込まれていること。

審査員

・パオロ・コロネッロ氏

1974年に北イタリアのポルデノーネ生まれ。ミラノ工科大学のデザイン学部を卒業後、トニーサルチーナ氏からワインと料理の文化を教わる。ミラノのRistorante Innocenti evasioni(ミシュラン1つ星)、Hotel Principe di Savoia のRistorante Acantoを経、2008年に来日。東京都のヴォロ・コズィーで2年勤務、ヴェルデ・ウノ、グリゼ、ビチェでシェフを務めた。洋菓子の世界大会FIPGC2021でパイ生地を使ったスウィーツ部門のグランプリを受賞。

・マルコ・モリナーリ氏 

北イタリアの伝統料理を継承する家に生まれる。13歳から本格的にイタリア料理を学び、24歳で初来日を果たす。10年に1度開催される「世界パスタコンクール」で見事優勝。世界最年少で「マエストロ」の称号を得る。「世界お菓子大会」2005年優勝。「料理ワールドカップ」2002年部門金メダル獲得。2006年ケーキ部門総合郵送。2010年デザート部門・料理部門共に金メダル獲得。

・柴野 大造氏

世界的ジェラート職人。ジェラートを中心としたチーズ、ヨーグルトで世界に通用する「石川県発信の乳製品の総合メーカー」を目指す。ジェラートイリュージョンやジェラートの監修・コンサルで多数のショップを全国にプロデュース。ジェラートワークショップや農家、企業間連携により新たな商品を多数開発するなど、マルチな才能を発揮しジェラートの枠を超えて日々その可能性を追求中。

2017 世界洋菓子コンクール(FIPGC ミラノ開催)チームアジア代表監督

2017 Sherbeth Festival 2017(イタリア・パレルモ) 総合優勝 世界チャンピオン(アジア人初)

2017 ジェラートワールドツアーグランドファイナル世界大会決勝 一般投票1位、総合4位(アジア人最高位)入賞

2016 Sherbeth Festival2016(イタリア・パレルモ)外国人部門第1位 総合4位

世界ジェラート大使(ローマ アジア人初殿堂入り)

・櫛引 雲母氏

ティラミス世界大会でイノベーション部門世界一位、世界総合2位を獲得

決勝戦出場者 4名の実施審査では、それぞれ与えられた制限時間内で仕上げ、審査員による厳正なる味覚審査(クラシック・ティラミスでは、味:70% / 作り方…30%での評価。イノベーティブ・ティラミスは、味…50% / 見た目の美しさ…20% / 作り方…20% / 革新性…10%)に加え、試食している目の前でのプレゼンテーションが行われました。

決勝戦出場者 4名

ホテル椿山荘東京 イタリア料理「イル・テアトロ」ペストリーシェフ 川上 恭央 氏

イノベーティブ・ティラミス:Tiramisu Trinità

伝統的なティラミスの要素を用いながらも、盛付の妙や多様な食感により斬新に仕上げた一品。大ぶりのコニャックグラスの中には、パネトーネの生地にオレンジの香りをのせて、ザヴァイオーネのきいたマスカルポーネのムースを球体状で重ね、仕上げにエスプレッソのエスプーマをトッピング。グラス上部にイタリア国花であるデイジーの飴細工を飾ることで、イタリアへのオマージュも図っている。イタリア北東部フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の歴史あるリボッラ・ジャッラのオレンジワインを使用したザヴァイオーネが特徴です。

トラットリア イル・パチョッコーネ カゼイフィーチョ 高波 謙 氏

イノベーティブ・ティラミス:カゼイフィーチョの塩ティラミス

会場で一から手作りしたブラータチーズのティラミスクリーム詰めを、コーヒークランブル、エスプレッソのコーヒーゼリーの上にあしらったデセールのようなティラミス。また、全体に佐渡の塩を利かせることで、変化する味の広がりも見せています。

ノア企画 鉄本 翔希 氏

イノベーティブ・ティラミス:già tirato(ジアティラート)

イタリアの食文化では非常に馴染み深い”オレンジ”を、ティラミスとかけあわせることで、大会テーマであるイノベーティブな要素がありつつも、審査員の方々に受け入れられやすい味の構成に仕上げました。
オレンジの要素としてはセミドライに仕立てたオレンジの果肉とオレンジジュレの2種類を使用。食感の要素にはなめらかな質感のエスプレッソのスフレ、カリッした歯応えのカルダモン入りサブレなど、異なるテクスチャーのパーツを用いることで味わいや口当たりに広がりをもたせています。
オリジナルのシリコン型で作成したマキネッタ(直火型エスプレッソマシン)を模したチョコレート型を器とし、蓋を開けると珈琲豆の形をしたマスカルポーネのムースが現れるなど、インパクトのある見た目やストーリー性にもこだわりました。

モダンかすてら専門店 アガヌボナード 伊藤 貴浩 氏

イノベーティブ・ティラミス:「天空の古来茶」のティラミス 煎茶と焙じ茶の香り

岐阜県揖斐郡春日地域で700年前から栽培されているお茶の古来種を掛け合わせることで、日本の歴史や良さも伝えられる作品に仕上げようとデザインにも着目し構想。無農薬栽培を頑なに守り続けているこだわりのお茶の煎茶、焙じ茶を使っています。煎茶は香りが高く、焙じ茶は甘い香りが際立つ味わいをティラミスとの融合を図りました。
日本伝統のお茶とイタリア伝統のティラミスの融合させたイノベーティブなティラミスに仕上げています。

日本代表を選出するにあたり、審査員による味覚審査だけでなく、『ティラミスの本来持つ意味』であったり、『当大会の本質にある”世界でイタリアの卓越性を促進する”意図をしっかりと汲み取って、本場イタリアで受け入れられる素材を見極めているか』、『日本を背負って行くのに胸を張れる独創性と技術、下準備の期間どれだけ練習してきたか』なども踏まえての最終結果。

見事、ティラミス・ワールドカップ「The World Trophy of Professional Tiramisu’ FIPGC 2023」出場資格を得たのは、作品の味や独創性だけでなく、作業中の段取りも良く、終始作業台がきれいだったと、世界大会でも通用する人材であると認められたノア企画 鉄本 翔希 氏。

ーーー日本代表を掴み取った 鉄本 翔希 氏

予選から「イノベーティブ・ティラミス」はフォルムも大幅に変更を加えて決勝戦へ臨んだのは、前回のクオリティでは勝ちを望めないと思い、職場の上司にも協力を仰ぎながら最終の形に辿り着きました。

接戦の中で、代表に選んでいただき有難いと同時に、「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC」へ向け頑張ります。

ーーーパオロ・コロネッロ氏による総評

『それぞれ共通で指定の限られた材料を使う中で、大切になるのは量のバランス。クラシック・ティラミス、イノベーティブ・ティラミス共に鉄本氏はバランスが取れていた。また、減点法での採点を採用する中で、作業台の綺麗さや作業の工程も重要なポイントとなっていた。本番のワールドカップでも見られる項目になるので、日本代表の決勝戦でも着目した。』

ーーー世界的ジェラート職人 柴野大造氏の総評

『予選からの限られた時間の中で、どれだけ下準備したか、練習したのか。が、作業中の無駄のなさに垣間見れたのが鉄本氏だった。味・作業性はもちろんのこと、イタリアに日本代表として行き戦う中で、ティラミス本場の国でどれだけ通用するか、上位に食い込めるかという、ヨーロッパ目線でみても群を抜いていたと思う。素材に関しても、イタリアの食文化に合うかどうか。柚子や生姜などはヨーロッパでも受け入れられているが、餡子のような甘く煮詰めた小豆はまだ受け入れられにくい。日本だけの大会なら「イノベーティブ・ティラミス」は通用しても、今回最終は世界大会。「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC」審査員の味覚までも計算しなければいけない。あとは、器や見せ方にも気を使うことが大切。鉄本氏のチョコレート細工はイタリアデザインの直火式エスプレッソマーカーを用いただけでなく、蓋を開けた中にティラミスを仕込むという”驚き”の感性までも仕上げた。これは世界にもチャレンジしていく心意気を感じる。』

2023年に「HostMilano」内で開催される「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC 2023」への日本代表が決定した。

その結果も楽しみだが、また2年後はどんなシェフが参加し、どんな「イノベーティブ・ティラミス」が登場するのか。

今後も目が離すことのできない”ティラミス”に特化した最初の世界選手権「The World Trophy of Professional Tiramisù FIPGC」に注目していきたい。