[佐藤ひと美のスイーツレポート344]スイーツ新時代の幕開け!ヒルトングループ「ヒルトンスイーツ」が描く、美しき“食のオーナメント・アート”戦略

1984年、ヒルトン東京のマーブルラウンジで日本初のスイーツビュッフェを開始し、日本のホテルスイーツシーンのパイオニアとして君臨し続けてきたヒルトン。

2025年、その伝統と革新の精神が新たな次元へと進化します。ヒルトングループは、「ヒルトンスイーツ」ブランドを刷新し、国内のホテルブランドの垣根を超えて、同一テーマのスイーツ体験を同時期に展開するという、戦略的で画期的な取り組みを開始しました。

記念すべき第一弾のテーマは、ホリデーシーズンにぴったりの「クリスマスオーナメントをめしあがれ」。このテーマに込められた魅力と、各ホテルのペストリーシェフたちのクリエイティビティを深掘りします。

フード&ビバレッジオペレーションズ担当 サイモン氏が語る:ブランド刷新に込めた「次の40年」のビジョン

今回の「ヒルトンスイーツ」ブランド刷新は、ヒルトン 日本・韓国・ミクロネシア地区担当 フード&ビバレッジオペレーションズ 上席統括本部長のサイモン・ブレルスフォード氏が中心となって構想されました。イベントでは、同氏からこの戦略の核心が語られました。

①「最も素晴らしいスイーツ」へのこだわり

『ヒルトンは日本全国で最も素晴らしいスイーツのオフィスでありたい。40年近く続くケーキブッフェの歴史を継承しつつ、次の40年の未来を作るためにはどうしたらいいか数年かけて構築した』とサイモン氏は強調します。

これまでのテーマ性のあるスイーツブッフェから一歩進め、今回の新プログラムで重視したのは、「可愛い」や「見た目がいい」だけではない、「食べて本当に美味しい」クオリティと品質への回帰と、それを全国で統一展開することでした。

② 「ネットワーク」としてのスイーツ戦略

ヒルトンのスイーツが北から南まで、コンラッドのようなラグジュアリーホテルからリゾートホテルまで、全ヒルトングループで同一テーマの下に展開されるのは初めての試みです。

『この美しい国の中で、ヒルトンが提供するものを一つ一つのホテルと一つのプログラムをつなげていきたい』

この戦略は、各ホテルのペストリーシェフたちの才能を祝福し、統一されたテーマを通じてグループ全体の「食の魅力」を一つの強力なメッセージとして発信することを目的としています。この統一感が、今後のストロベリーシーズンなど、季節ごとのテーマ展開の基盤となります。

パイオニア精神の再起動:ヒルトンが仕掛ける戦略的イノベーション

今回の「ヒルトンスイーツ」ブランド刷新は、単なるプロモーションの変更ではなく、ヒルトングループが持つ「伝統と革新」というDNAの再起動を意味します。

①100年を超えるイノベーションの系譜

ヒルトンは、1919年の創業以来、常にホスピタリティ業界の先駆者であり続けてきました。

業界初の試み: 客室へのエアコンやテレビの導入、デジタル・キーの共有、無料の客室アップグレードの事前選択など、ヒルトンは常に顧客体験(ゲストエクスペリエンス)を向上させる技術とサービスを業界に先駆けて導入してきました。

食における革新: そして1984年、ヒルトン東京のマーブルラウンジで「日本初のスイーツビュッフェ」を始めたことも、このイノベーション精神の明確な表れです。

②「スイーツ」をトリガーとした新たな顧客エンゲージメント

今回の統一テーマ戦略は、宿泊客以外の地域住民やデスティネーション・トラベラーに対する訴求力を強化する狙いがあります。

飲料体験やレストランバーの充実は、宿泊以外の目的でホテルを利用してもらうための重要な要素です。スイーツは特に、視覚的な楽しさ(インスタ映え)と非日常的な体験を同時に提供できるため、ヒルトングループの「ブランドの入口」として機能します。

全ブランドで同一テーマを展開することで、一つのホテルでの体験が他のホテルへの興味へと繋がり、ヒルトン・ブランド全体へのロイヤルティ向上を目指す、極めて戦略的な一手と言えるでしょう。

③日本国内での積極的なブランド展開を後押し

現在、日本国内で8ブランド31軒を展開し、さらに15件の新規開業を予定しているヒルトンにとって、ブランドの認知度向上と「食の魅力」の強化は急務です。

スイーツという共通言語で、ラグジュアリーの「コンラッド」からリゾートの「ヒルトン」まで、多様なブランドの魅力を同時に、かつ強力に発信できるこの戦略は、今後の国内市場でのプレゼンス拡大に向けた盤石な基盤を築くものと分析できます。

各ホテルの個性が光る「食べられるオーナメント・アート」

「クリスマスオーナメントをめしあがれ」というテーマのもと、参加ホテルから発表されたスイーツは、単なるビジュアルの美しさだけでなく、素材、技術、物語が込められた「ペストリー・オーナメント」です。各ホテルのペストリーシェフたちの創意工夫と食感へのこだわりを詳述します。

「ヒルトン東京」:フレンチスタイルと酸味の共演

エグゼクティブ・ペストリーシェフのラティーシュ・ナイヤー氏が紹介したのは、クリスマスケーキ「スノー・リース」と、スイーツビュッフェで提供される「ロイヤル・オーナメント」。

「スノー・リース」※限定60個 9,800円

直径18㎝、高さ8㎝ (8名様~10名様用)

クリスマスオーナメントのテーマをリースという形で表現した限定ケーキ「スノー・リース」。

マロンとベルガモットのコントラストが特徴の”チェスネットバーガモンケーキ”。

まるでチーズのように濃厚で風味豊かなクレーム・ドゥーブル(ダブルクリーム)のバニラムースを主役に据え、深みのある味わいを構成し、中には、秋冬らしいコクのあるマロンブリュレと、爽やかなアロマが広がるベルガモットのクリーム、香ばしいヘーゼルナッツのダコワーズが重ねられています。

濃厚なダブルクリームの風味を活かしつつ、ベルガモットの爽やかな香りが重さを打ち消し、重すぎない口当たりを実現しています。トップには雪の結晶を思わせるホワイトチョコレートと松ぼっくり型のチョコレートが飾られ、リースのように可憐で華やかな、大人向けの味わいに仕上げられています。

「ロイヤル・オーナメント」 ※クリスマススイーツビュッフェで展開商品

ヒルトン東京1階「マーブルラウンジ」のスイーツビュッフェ『King & Queenのクリスマス』に登場する「ロイヤル・オーナメント」は、クリスマスツリーを彩る主役級の存在感を放つ、深紅のドーム型ケーキです。このケーキは、見た目の華やかさだけでなく、素材の風味とフレンチスタイルの洗練された味わいが際立ちます。

ベースには香ばしいココナッツダコワーズとクッキー生地を使用。その上に、軽やかなココナッツムースと、爽やかな酸味のラズベリージュレを忍ばせ、全体を艶やかなラズベリーババロアムースで包み込んでいます。酸味とクリームのバランスが徹底的に重視されており、濃厚なココナッツの甘さとラズベリーのキュッと引き締まった酸味が、口の中でエレガントに調和します。単なる甘いデザートに終わらない、素材の風味を活かしたシェフの技術が光る逸品です。

「ヒルトン東京」

住所:東京都新宿区西新宿6-6-2

公式サイト:https://tokyo.hiltonjapan.co.jp/

「コンラッド東京」:口どけと食感のコントラストと岡崎シェフが描く洗練されたオーナメント

ヒルトンのラグジュアリーブランド、コンラッド東京(東京・汐留)からは、エグゼクティヴ ペストリーシェフ 岡崎 正輝氏が手掛ける、洗練された技術とテクスチャへのこだわりが光る「オルネ・ド・サパン」と「ビジュー」の2品が登場。オーナメントをモチーフとしながらも、随所にラグジュアリーな大人のセンスが感じられます。

「Orner de Sapin(オルネ・ド・サパン)」

直径15cm  6,500円

フランス語で「モミの木の飾り」を意味する名の通り、ガナッシュでクリスマスツリーに見立てられた芸術的なチョコレートケーキ。ゴールドのオーナメントが上品さを添える、まさに大人のための逸品です。

このケーキはチョコレート尽くしでありながら、味わいには複雑な奥行きがあります。

主役は、ダークチョコレートの酸味とオレンジのアクセントをほど良く効かせたチョコレートムース。そのムースの中に、チョコレート生地と、香ばしいカラメリゼしたヘーゼルナッツのムースが重ねられています。濃厚なビターチョコレートでコーティングされ、口どけの良さが魅力ですが、ザクザクしたクランブルが食感のアクセントとして組み込まれており、単調になりがちなチョコレートの風味に小気味良いリズムを加えます。ダークチョコレートの酸味とオレンジの風味が重厚さに軽やかさをプラスし、モミの木の飾りをテーマに昇華させた、洗練された大人のためのオーナメントです。

「Bijou(ビジュー)」

直径17cm  7,200円

宝石(ビジュー)をイメージし、雪に包まれたホワイトクリスマスをテーマにしたムースケーキ。

非常に口どけの良いホワイトチョコレートムースを主軸に、緻密な層で構成されています。ムースの中には、芳醇なタヒチ産バニラを使用したクレームブリュレ、いちごのジュレ(ベリーとグリオットチェリーを含む)、そしてピスタチオ風味のスポンジが重ねられています。

味わいの妙は、いちごの甘酸っぱさとピスタチオのコクという鮮やかなメリハリを、なめらかなクレームブリュレが優しく包み込み、口の中で溶け合う点。さらに、薄く焼いたサクサクのクレープ生地(フィアンティーヌ)がテクスチャの面白さを加え、白いオーナメントが飾られた姿は、まさにテーブルを飾る繊細な宝石のようです。

「コンラッド東京」

住所:東京都港区東新橋1-9-1

HP:https://conrad-tokyo.hiltonjapan.co.jp/

「ヒルトン小田原リゾート&スパ」:リゾートで輝くファミリーのためのオーナメントタルト

ヒルトン小田原 ペストリーシェフ柏木 英里子氏が紹介したのは、ファミリー層の多いリゾートホテルならではの、何世代でも楽しめる華やかさを追求したクリスマスのタルトを提供。

「メリールージュ」

16cm  6,800円

クリスマスツリーを飾るオーナメントをイメージしたドーム型の心躍るビジュアルが特徴。

箱を開けた時の「わあ!」を狙ったこのケーキは、味、香り、視覚のすべてでクリスマスカラーを体現。

味、香り、視覚のすべてでクリスマスカラーを体現しており、下は全粒粉を使った香ばしいタルト生地がベース。タルト生地にはアーモンドクリームにピスタチオペーストを混ぜ込み、香ばしさとナッティなコクを強調しつつ、その上にドーム状にラズベリーとピスタチオのムースが重ねられています。このムースの断面がクリスマスカラー(赤と緑)を演出し、さらに甘酸っぱいラズベリージャムをアクセントに加えることで、濃厚さと軽快さが調和し奥行きのある味わいを実現。

柏木シェフは、特に箱を開けた時の「わーっ」という驚きを狙ったと語っており、鮮やかな色合いと繊細な構成が、家族全員が楽しめるリゾートの温もりを感じさせる華やかなオーナメントタルトに仕上がっています。

「ヒルトン小田原リゾート&スパ」

住所:神奈川県小田原市根府川583-1

HP:https://odawara.hiltonjapan.co.jp/

「コンラッド大阪」:情熱的な赤とブランドの世界観

コンラッド大阪からは、ペストリーシェフの児島 大地氏が手掛ける、艶めく大理石のようなミラーケーキ「オーナメント・フレーズ」が登場。このケーキは、単なるスイーツに留まらない、ホテルのブランドコンセプトと連動した深い物語性を持っています。

「オーナメント・フレーズ」

直径17cm  6,700円 

艶やかで鮮やかな赤いミラーグラサージュが最大の特徴。

この赤は燃える炎のような情熱を、アクセントとして走る白いラインは純白の雪を表現しており、力強くエネルギッシュなビジュアルに仕上げられています。

中には、芳ばしいピスタチオの香りと優しい甘さのストロベリームース、甘酸っぱいベリーとローズのジュレ(タヒチバニラのアングレーズも使用)が層をなし、味わいに奥行きを与えています。底部にはジョコンドスポンジとサクサクとしたフィアンティーヌ(チョコレートとピアンティーヌ)が敷かれ、ムースの軽やかな食感に対し、小気味良いアクセントを加えています。

トップには、祝福と絆を意味するチョコレート製の赤いオーナメントが飾られ、華やかなホリデーシーズンにぴったりのケーキです。

さらに、お土産のクリスマスコンラッドベアが「88星座」をモチーフとし、ホテルのカーペットの星座デザインと連動させることで、コンラッド大阪の洗練された世界観をさりげなく、かつ統一的に表現するブランド戦略が光ります。

「コンラッド大阪」

住所:大阪府大阪市北区中之島3-2-4

HP:https://conrad-osaka.hiltonjapan.co.jp/

「ヒルトン東京ベイ」:体験型スイーツでファミリー層を魅了

ヒルトン東京ベイ ペストリーシェフ松下 陽亮氏が紹介したのは、東京ディズニーリゾート®オフィシャルホテルらしい体験型スイーツ。

「ジンジャーブレッドマンのオーナメントクッキー」※クリスマススイーツビュッフェで展開商品

クリスマススイーツブッフェのテーマ「テディベア in ロンドン」内で提供される体験型スイーツ。来場者が白、緑、赤の3色アイシングペンでオリジナルジンジャーブレッドマンをデコレーションし、これをビュッフェ台のクリスマスツリーにオーナメントとして飾ることで、「作る楽しさ」と「飾る楽しさ」を同時に提供しています。

「ヒルトン東京ベイ」

住所:千葉県浦安市舞浜1-8

HP:https://tokyobay.hiltonjapan.co.jp/

非日常と、次の40年に向けた「食のイノベーション」をめしあがれ

ヒルトンの「ヒルトンスイーツ」は、単なるデザートの提供から、グループ全体を牽引する戦略的な「食のイノベーション」へとその役割を進化させました。

フード&ビバレッジオペレーションズを統括するサイモン・ブレルスフォード氏が語る「次の40年のヒルトンスイーツ」への挑戦は、単にテーマを統一するだけでなく、「食べて本当に美味しい」クオリティと品質への揺るぎないコミットメントに裏打ちされています。この統一テーマ戦略こそが、宿泊客だけでなく広範な顧客層に対し、ヒルトン全体の「食の魅力」を最も強力に、かつ多角的に発信する戦略的なプラットフォームとなるでしょう。

今回、シェフたちが共通テーマ「クリスマスオーナメントをめしあがれ」という制約の中で発揮した創造性は、まさに圧巻!ヒルトン東京のフレンチスタイルと素材の酸味へのこだわり、コンラッド東京の複雑な食感の対比と口どけの妙、ヒルトン小田原のリゾートらしい華やかさとナッティな深み、そしてコンラッド大阪の情熱的なビジュアルとブランド世界観の巧みな連携——それぞれの個性が、一つの共通モチーフを通じて見事に結実しています。

これは、日本のスイーツシーンにおけるヒルトンのパイオニア精神の再発揮であり、贅沢なスイーツタイムを通じて、私たちに幼い頃の「わくわく感」と「非日常の特別感」を五感で再体験させてくれます。

全国のヒルトングループホテルが奏でる、この冬だけの一斉にきらめく「食のオーナメント・アート」を、ぜひ心ゆくまで堪能し、ヒルトンが切り拓くスイーツ新時代の幕開けを体感してください。