
2026年4月1日、東京・六本木の「ザ・リッツ・カールトン東京」に、世界のパティスリー史に名を刻む「ニナ ザ・リッツ・カールトン東京」が誕生しました。

2024年に「世界最優秀パティシエ」に選出されたニナ・メタイエ(Nina Métayer)氏を招聘したこのプロジェクトは、2年前から計画され、長い準備期間を経て実現しました。
世界中の美食家がその動向を注視する中、なぜ彼女は最初の海外拠点として日本を選び、ザ・リッツ・カールトン東京は彼女にすべてを託したのか。そこには、2年の歳月をかけた情熱と、必然とも言える「知性の共鳴」がありました。

彼女の日本初出店となるこのパティスリーは、単なるスイーツの提供にとどまらず、フランスの伝統と最先端の3D技術、そして日本文化・四季の美意識が共鳴する「芸術の結節点」となっています。
■ 自然を慈しみ、世界を制した「若き至宝」ニナ・メタイエの軌跡

1988年、フランスのラ・ロシェルに生を受けたニナ・メタイエ氏。そのキャリアは、既存の枠にとらわれない情熱に満ちています。メキシコへの交換留学中にブーランジェリー(パン)とヴィエノワズリーの道を志し、オーストラリアでの経験を経て、パリの名門料理学校「フェランディ」でその才能を完全に開花させました。
卒業後は「ル・ムーリス」や「ル・ラファエル」といった最高級パラスホテルで研鑽を積み、スターシェフ、ジャン=フランソワ・ピエージュ氏の「ル・グラン・レストラン」ではデザート開発の全権を掌握。開業わずか6ヶ月でのミシュラン2つ星獲得という伝説に大きく貢献。2016年から3年連続で国内の最優秀パティシエに選ばれると、2023年にはUIBCより女性初の「ワールド・コンフェクショナー賞」を受賞。そして2024年、ついに「世界最優秀パティシエ」の頂点へと上り詰めたのです 。
彼女の創作の源泉は、常に「自然や季節の移ろい」にあります。卓越性と簡潔さを重んじる日本文化の美意識に深い感銘を受けている彼女は、単なる職人の枠を超え、フランス国家功労勲章シュバリエを受章するなど、現代フランス文化を象徴するアイコンとしての地位を確立しています。
■ 伝統への畏敬と革新の調和――2年の歳月と「総料理長の熱意」が結んだ”知性のハイブリッド”
「なぜ、ザ・リッツ・カールトン東京にニナ・メタイエなのか」。その問いへの答えは、本プロジェクトに最も強い熱意を注いできた総料理長、サンドロ・ガンバ氏の存在抜きには語れません。

かつてフランス・パリでその名を轟かせていたニナ氏は、同業者である現地のパティシエたちからも「彼女こそが次代のスタンダードを創る」と一目置かれる、いわば「プロが憧れるプロ」でした。
その圧倒的な実力を確信していたサンドロ氏は、2年前の計画始動時から彼女の招聘を熱望。一度は途切れたかに見えた交渉を、自らの情熱と「彼女の成功に対し99.9%以上の自信がある」という揺るぎない確信によって手繰り寄せたのです。
彼女の創作哲学を象徴するのは、フランス菓子の伝統への深い敬意を土台としつつ、3Dプリンティング技術という現代の英知を融合させる「ハイブリッドな知性」にあります。彼女にとって3D技術は単なる装飾の道具ではなく、自然界の黄金比や花の繊細な花弁を数学的に再現し、素材の味わいと完全に同期させるための「精密な設計図」に他なりません。この緻密な計算に基づいた造形美こそが、素材本来の持ち味を最大限に引き出し、五感を揺さぶる完璧な調和(ハーモニー)を生み出すのです。
「世界最高峰の芸術」を日本で具現化するため、日仏合同の多国籍チームが結成されました。単なるレシピの伝達ではなく、徹底的なトレーニングを通じて「フランスの職人魂」と「日本の細部へのこだわり」を融合させるプロセスは、真にクリエイティブな挑戦でした。さらに、日本市場向けにサイズや食材、柑橘系のバランスを再構築するなど、独自のローカライズ研究も結実。

現在進行中である抹茶の「フィナンシェ」や大納言小豆を使用した和風「ダッコワーズ」の開発は、ニナ氏が日本文化から受けた衝撃を新たな驚きへと昇華させる「文化交流」そのものと言えるでしょう。
■ 五感を震わせる「ニナ コレクション」の全貌
今回のソフトオープンでは、一部の商品およびサービスに限定した形でのスタートとなっており、店内と屋外テラス席でそれぞれ異なる魅力的なメニューが提供されます。
館内1階に広がる32席の洗練されたパティスリー空間で供されるのは、ブランドの象徴である「椿(カメリア)」をモチーフにしたシグネチャーメニュー「ニナ コレクション」です。このメニューは単なるセットではなく、ゲスト一人ひとりの感性に寄り添う極めてパーソナルな体験を約束します。
<店内メニュー>「ニナ コレクション」〜Nina’s Spring Collection〜

提供時間:午前11時〜午後7時(L.O.)
料⾦:6,100円
季節のウェルカムドリンク、アミューズブーシュ、厳選ペストリー3種または本⽇のアシェットデセール、チョコレート「カメリア」(プチサイズ)、お好みのお飲み物1種

ティータイムの幕開けを華やかに飾るのは、ゲストが自ら主役となって5種類の中から1つを選び出すアミューズブーシュの儀式です。

ラインアップはシーズンごとに刷新され、毎朝店内で焼き上げられる芳醇な香りの「レモンのマドレーヌ」や、アーモンドペーストをベースにした生地に、プラリネの層を幾重にも重ねたフランス伝統菓子ベースの「プチ ガロパン(Petit Galopin)」など、細部まで「一石多鳥」のこだわりが宿ります。

この至高のコレクションは、期待感を高める季節のウェルカムドリンクから始まり、計算し尽くされた3種の厳選ペストリー、そしてニナ氏自らが吟味した6種の紅茶をはじめとするティーセレクションへと続きます。椿の花が咲き誇るようなエレガントな厳選ペストリーまたは本日のアシェットデセールを囲み、重層的な味わいと香りが織りなす至福のひとときが、訪れる者を非日常の美食体験へと誘います。
シグネチャーペストリーに宿る「味の層」と「極意」

「ニナ コレクション」〜Nina’s Spring Collection〜の白眉とも言えるペストリーたちは、ニナ氏が描く緻密な設計図のような美しさと、重層的な味わいの深さを兼ね備えています。
マダガスカル産バニラとピーカンナッツのフラワーケーキ

本国フランスで愛されてきた一品を日本向けに再構築した、華やかなシグネチャー。アルモンド生地によるザクザクとした力強い食感を土台に、芳醇なマダガスカル産バニラのムースとコク深いクリームが繊細な層を成します。キャラメリゼされたピーカンナッツの香ばしさと、フルール・ド・セル(塩の花)の微かな塩気が、甘美な余韻に鮮やかな輪郭を与え、表面に輝く朝露のような透明なドットが優雅さを添えます。
シトラスフラワー

軽やかさと洗練を極めた、レモンゴレッドフラワーを冠する柑橘の芸術です。しっとりとしたアーモンドスポンジになめらかな柑橘クリームを重ね、レモン、柚子、オレンジが織りなす清々しい香りの連鎖が、上品な余韻を奏でます。
エキゾチックフルーツのパブロバ

外は繊細な歯ざわり、中は驚くほど柔らかなメレンゲの対比が魅力のデザートです。ライムを効かせたクリームの下には、マンゴーとパッションフルーツのコンフィが潜み、瑞々しい果肉がトロピカルな華やぎをもたらします。美味しくいただく極意は、「最初にフルーツを楽しみ、最後にバブルを加える」という独自の作法にあり、その手順が五感を一層研ぎ澄ませます。
<屋外テラス席メニュー>ニナ テラス
提供時間:午前11時〜午後7時(L.O.)
料⾦:2,500円
一方、開放感あふれる屋外テラス席では、花を表現した2種の厳選ペストリーと、ミニサイズの「カメリア」チョコレート、ドリンク1種のセットを提供。
また、制作発表会ではアシェットデセール「ラ ピヴォワーヌ」などの繊細なパイピングも披露されました。個々に異なる動きや形の変化を尊重するニナ氏の哲学が、一皿ごとのパイピングにも宿っています。

アシェットデセール「ラ ピヴォワーヌ」は、赤い花束のようなビジュアルが印象的な一皿 。

口の中でほどけるメレンゲに、赤いベリーとグリーンアップルの優しい甘み、ほのかに生姜が香る柚子のソルベ、いちごのコンフィを重ねました。アールグレイが香るシャンティクリームが全体をまとめ、多彩な味わいが調和します。

特に、仕上げにソースをかけることでメレンゲの甘さを調整し、酸味を加える工夫がなされており、味と食感の完璧なバランスを追求した五感を意識した逸品です。
■ 「大地の雫」:日本のミニマリズムとの共鳴

店舗のインテリアデザインは、建築家・デザイナーの山下泰樹氏が担当。コンセプトは「大地の雫」 。ブランドの象徴である椿(カメリア)を、その花が咲く「大地」に見立てた空間を構築しています。柔らかなベージュとブランドカラーのダークレッドを基調としたこの空間には、四季や花を大切にする日本的な精神が息づいています。

日本のミニマリズムに基づいた「余白のあるデザイン」は、主役であるスイーツを美しく「開花」させるためのキャンバスに他なりません。かつてパリの美食家たちを熱狂させたニナ氏の「知性」は今、日本の四季やアートと共鳴し、かつてない高みへと昇華されようとしています。

伝統という揺るぎない土台の上に、3Dテクノロジーという現代の魔法を接ぎ木して生まれる唯一無二の結晶。ザ・リッツ・カールトン東京で始まるこの新たな物語は、日本のパティスリー界に「真の革新」とは何かを問い続けていくことでしょう。

現在は一部の商品およびサービスに限定したソフトオープンという幕開けですが、今後は段階的に商品ラインアップが拡充され、生菓子を含むデリバリーサービスも順次開始される予定とのこと。

世界が注視するその「開花」の瞬間を、ぜひ五感すべてで受け止めてみてください。