
東京・大手町の地上33階に位置する「アマン東京」。

その美しく開放的な空間にあるイタリアンレストラン「アルヴァ」にて、2026年6月6日・7日の2日間限定で、特別なデザートビュッフェ『ドルチェ in アルヴァ:インフィオラータ』が開催されました。

毎回異なるテーマで訪れる人を魅了する『ドルチェ in アルヴァ』。

今回は、イタリアの伝統的な花祭りをテーマにした、五感を揺さぶる美しいドルチェの数々がお出迎え。
スイーツコンシェルジュ資格を持つスイーツライターの視点からも、普段なかなかお目にかかれないイタリア地方菓子の奥深さに深く感じ入る、非常に贅沢な時間。
今回、その素晴らしい体験とともに、早くも待ち遠しい“秋の次回開催”へ向けた魅力をたっぷりとお届けします。
■テーマはイタリア・スペッロの伝統行事「花祭り(インフィオラータ)」
今回のビュッフェのインスピレーションの源となったのは、イタリア・ウンブリア州スペッロで受け継がれる伝統行事「インフィオラータ(Le Infiorate di Spello)」。初夏の街の通り一面に、色鮮やかな花びらで美しい絵柄や絨毯を描き上げる、歴史ある花祭りです。
ラテン語で「収穫」を意味する「アルヴァ」では、この美しい伝統にオマージュを捧げ、花びらの色彩の代わりに「柑橘」「ハーブ」「フローラル」「スパイス」といった多彩な香りをまとわせたイタリア菓子で、見事な「香りのモザイク」を表現。東京にいながらにして、イタリアの初夏の風を感じられるようなドラマチックな空間が広がっていました。
■ 気候、歴史、地形が織りなす「イタリア菓子の地域性」を読み解く
フランス菓子が宮廷文化を中心に洗練されていったのに対し、イタリア菓子は各地域(州)の風土や歴史的背景と深く結びつき、独自の発展を遂げてきました。今回のビュッフェは、まさにその「地域性の違い」を一度に体感できる、知的な食の旅でもあったのです。
提供されたドルチェの背景にある、イタリア4つのエリアの特長を紐解きます。
〇 【北部】そば粉やとうもろこし粉など、寒冷地の素材を駆使した味わい深い菓子
アルプス山脈を境に、近隣諸国の影響を受けながら独自の食文化を形成してきた北イタリア。冬は気温が低く積雪もあり、収穫できる作物が少ない地域です。山間部では土地が痩せていて小麦の栽培が難しいため、そば粉やとうもろこし粉などが使われるのが特徴で、栗やヘーゼルナッツがかつての栄養源として重宝されました。また、平野部(ロンバルディア〜エミリア・ロマーニャ)は酪農が盛んなため、バターや生クリームなどの乳製品が菓子にも多く使用されています。寒さに負けないよう体を温め、エネルギーを蓄える役割も持っていました。
〇 【中部】様々な食文化が入り混じる地域。丘陵地で採れた栗や木の実、農民発祥の素朴な菓子
南北に長いイタリア半島のほぼ真ん中に位置する中部。古くからエトルリア人や古代ローマ帝国により文明が栄え、その後も南部と北部の食文化が混ざり合いながら発展しました。延々と続く美しき丘陵地帯では軟質小麦の生産が盛んで、山間部では良質な栗が収穫できるため、栗粉を使った菓子が多く作られています。ルネサンス期のメディチ家の繁栄によって華やかな宮廷菓子が発展した一方で、農民発祥のシンプルな材料で作る素朴なおいしさの菓子も多いのが特徴です。
〇 【南部】温暖で乾燥した地域ならではの、オリーブオイルなどを使ったさっぱりした菓子
太陽が燦々と降り注ぎ、一年を通して温暖な気候の南イタリア。平野ではオリーブ畑が続き、沿岸部ではアーモンドなどの木の実や柑橘類がたわわに実ります。乾燥した気候のため硬質小麦(セモリナ粉)の栽培に適しており、菓子にはバターよりもオリーブオイルやストゥルット(豚の背脂)が使われ、乳製品などの濃厚な味わいではなく「粉の旨味」を味わうような、口当たりのさっぱりしたものが多いのが特徴です。修道院発祥の菓子や、素朴な農民の家庭菓子が多く存在します。
〇 【島部(シチリアなど)】他民族支配により早くから食文化を発達。アラブ人の影響を受けた独自の菓子
地中海貿易の拠点として古くから様々な民族に支配され、本土とは切り離された独自の歴史を歩んできたシチリア島。特に9世紀のアラブ人支配により、砂糖やスパイスが入ってきたことで菓子文化が早い時代から発展し、その後、その技術は王家や修道院によって磨かれていきました。古くから「ローマ帝国の穀物倉庫」といわれたほど硬質小麦の栽培が盛んで、羊のリコッタを使った菓子が多いのも特徴です。甘味料としてのハチミツやブドウ汁、アーモンドの油脂分を利用して作ったマジパンがベースの菓子も、本土にはない独自の文化として息づいています。
ひとくち口に運ぶたびに、イタリア半島を北から南へと旅しているような感覚に陥る贅沢さ。ただ「甘くて美味しい」だけでなく、その土地の風土が透けて見えるような奥深さこそが、イタリアンドルチェの真髄なのです。
■普段なかなかお目にかかれない!伝統的なイタリア地方菓子の深い魅力

スイーツライターとして多くの洋菓子に触れてきた私にとっても、今回のラインナップは非常に新鮮で、イタリア菓子の奥深さを学ぶ素晴らしい時間となりました。一般のビュッフェではなかなか出会えない、クラシックで素朴な郷土菓子が、パティシエの高度な技巧によって洗練された姿で並びます。
特に印象的だったメニューをいくつかご紹介します。
〇 ラッタイオーロ(トスカーナ州)

古くからトスカーナ地方に伝わる「牛乳と卵の焼きプリン」のような伝統菓子です。その始まりは、かつて「Corpus Domini(聖体の祝日)」の日に、農民が領主に貢ぎ物として持参していた特別な存在でした。プリンによく似ていますが、大きな違いはカラメルがないこと。材料も作り方も非常にシンプルだからこそ、レモンの清々しい皮の香りと、ナッツメグやシナモンといったスパイスの微かなニュアンスが、素朴な卵とミルクの味わいを優雅に引き立てます。
〇 ヌカートリ(シチリア州)

スパイスの香りが豊かに立ちのぼる、シチリアの伝統的な焼き菓子です。独特な形をした生地の中に、シチリア産のハチミツやナッツ、乾燥イチジク、そしてシナモンなどのスパイスをブレンドした濃厚なフィリングが詰まっています。ひとくち齧ると、エキゾチックで力強いスパイスの香りが口いっぱいに広がり、かつて様々な文化が交差したシチリアの歴史に想いを馳せるような、深みのある味わいです。
〇 カネストレッリ(リグーリア州)

小さな「お花の形」が愛らしい、中世から北イタリア・リグーリア内陸部で作られていたとされるビスコッティ。かつては結婚式や宗教的な祝い事の際に使われ、小さなカゴ(canestro)に入れて保存・分配されていたことからその名が付きました。
最大の秘密はその驚くほどデリケートな食感にあります。ここには、茹でた卵黄を生地に練り込むというイタリアの伝統技法(パスタ・フロッラ / pastafrolla)が用いられています。普通の焼き菓子のように生卵をそのまま入れると生地に粘りが出てしまいますが、硬ゆでした黄身を混ぜることで粘りを抑え、口に入れた瞬間に雪のようにホロホロ、モロモロと優しく解けていく独特の口どけを生み出しているのです。
バターの豊かな香りと可憐なマーガレット型(花の形)が、今回のテーマ「インフィオラータ(花祭り)」に美しく寄り添う、まさに隠れた名作。
さらに今回は、そのままの食感を堪能した後に、「イタリアの現地流にコーヒーやラテにさっと浸して食べる」という、本場の楽しみ方にも挑戦!

水分を含んだカネストレッリは、お口の中でじゅわっと優しく解け、そのまま食べた時とはまた違う、家庭菓子ならではのホッとするような温かみのある美味しさへと変化します。単にスイーツを味わうだけでなく、現地の人々が愛するリアルな食文化の楽しさに触れられたことは、ライターとしても非常に貴重で幸福な体験でした。
〇 ズッパイングレーゼ

イタリア語で「イギリス風スープ」という一風変わった名を持つ、スプーンで食べるデザート菓子(dolce al cucchiaio)のクラシック。その発祥には諸説ありますが、一説にはメディチ家が関わったとも言われています。カトラリーを早い時代から使って食事を楽しんでいた、イタリアの高貴な貴族文化が垣間見えるのがこのお菓子の面白いところ。

スパイスを漬け込んだ伝統的な真っ赤なリキュール「アルケルメス」をたっぷり染み込ませたスポンジと、なめらかなカスタード、そしてホイップクリームが美しい層を成し、ローズのような気品ある芳香が口いっぱいに華やかな余韻を残します。
〇 ポレンタオゼイ(別表記:ポレンタ エ オゼイ)(北イタリア・ロンバルディア州)

美しき中世の街・ベルガモを代表する、見た目のインパクトも抜群の名物菓子です。「オゼイ」とは地方の方言で「小鳥」を意味し、かつてこの地方で狩りをして仕留めたスズメなどの小鳥を、トウモロコシ粉の粥(ポレンタ)と一緒に食べる習慣があったことから、その郷土料理に見立てて作られました。 とうもロコシ粉を表現した黄色いマジパンのドームをめくると、中にはヘーゼルナッツのバタークリームとチョコレートが包まれており、トップにはマジパンで作られた愛らしい小鳥の姿が。イタリア人の豊かな想像力と遊び心に思わず笑みがこぼれる、奥行きのある贅沢な味わいです。
〇 ビスコッティ ディ マンドルレ(シチリア州)

シチリア菓子に欠かせない重要な素材、アーモンド(マンドルレ)を主役にしたシチリア全土で愛されるビスコッティ。最大の特徴は、小麦粉を一切使わずにアーモンドパウダー、卵白、砂糖のみで作られている点です。粉が入らないためしっかり焼き込む必要がなく、外側はサクッと、内側は驚くほどしっとりとしたソフトな食感が残ります。
今回のビュッフェでは、トップに鮮やかな赤と緑のドレンチェリー(チェリーの砂糖漬け)があしらわれ、まるで小さな花が咲いたかのような、テーマである「インフィオラータ(花祭り)」にふさわしい華やかな佇まいでお出迎え。アーモンドの濃厚でコクのある甘みと、甘酸っぱいチェリーが織りなすクラシックで王道な美味しさは、どこか懐かしくも洗練されており、どこを切り取っても「香りと伝統」を感じるアルヴァならではの丁寧な手仕事が伝わってきました。
〇 ビスコッティ レジーナ(シチリア州)

香ばしい白ごまをたっぷりとまとった、“女王(レジーナ)のビスコッティ”という気品ある名を持つ西シチリアの伝統菓子。アフリカを原産とするごまは、9世紀にアラブ人がシチリアに持ち込んだとされる歴史的な食材です。かつては非常に貴重で栄養価が高かったことからこの名が付けられたとも言われています。サクサクとした軽い生地に、ほのかに香るオレンジフラワーやレモンの皮の柑橘香、そして優しく包むごまの芳醇な風味が調和し、噛むほどに素朴な気品が広がる一品です。
〇 カンノーリ(シチリア州)

今やシチリアを代表する世界的人気菓子ですが、その発祥を巡っては諸説あり、アラブ時代にハーレムで生まれ、後に修道院で作られるようになったという興味深い伝承も残されています。名前の由来は、昔、筒状の生地を揚げる際に「canna(カンナ=葦)」に巻き付けたことから。 アルヴァのビュッフェでも、カリッと香ばしく揚げられた手作りの皮(スコルツァ)の中に、なめらかなリコッタクリームが贅沢に詰められていました。本場ではクリームの水分で皮が湿気ないよう、食べる直前にクリームを詰めるライブ感が重視されますが、ビュッフェでもまさにその理想的な「カリッ、とろっ」の絶妙な食感のコントラストと、フレッシュなリコッタのコクが完璧なバランスで再現されていました。

香りに導かれながらイタリア各地を旅するような贅沢なラインナップ揃い!そんな華やかなビュッフェ台で見つけて、思わず胸がときめいたのが「ズッコット」。
〇 ズッコット(トスカーナ州)

実はこのお菓子、スイーツ検定で深く学ぶフィレンツェの銘菓であると同時に、製菓の歴史においては一説に「メディチ家のために作られた最初のセミフレッド」とも語り継がれる特別な名作。伝承では、16世紀中頃にメディチ家に仕えた高名な建築家・芸術家であり、稀代の食通でもあったベルナルド・ブオンタレンティが考案したものが起源とされています。氷や雪を集めた貯蔵庫で食品の冷凍技術を発明した彼が、そのドーム型の貯蔵庫のなかで完成させた新しい冷たい菓子――それこそがズッコットの始まりでした。
名前の由来は、聖職者がかぶる小さな円形の帽子(ズケット)や、当時の兵士が被っていた金属製の帽子に似ていることから。スポンジ生地にリコッタクリームや木の実、チョコレートを詰め、香りと彩り付けに「アルケルメス」という真っ赤なスパイスリキュールを使うのが伝統的なスタイルです。
基本の定義では半凍結の「セミフレッドタイプ」として有名ですが、今回のアルヴァのビュッフェでは、あえて凍らせずにしっとりとした質感を心ゆくまで堪能できる、極上の生ケーキ仕立てで登場!
ココアパウダーと粉糖で美しく色分けされたドーム状のスポンジ。その美しい断面を覗くと、伝統への敬意を感じるナッツやチョコチップ、ドライフルーツがリッチなクリームの中に贅沢に散りばめられています。ひとくち運ぶと、ふんわりと滑らかな口当たりのなかに、様々な素材の食感と香りがリズムを刻むように広がり、その完成度の高さにため息が出ます。
かつてカテリーナ・デ・メディチがフランスへ嫁ぐ際にも持ち込んだという高貴な歴史に想いを馳せながら、現代の洗練されたデザートとして昇華させるパティシエの技とセンスに触れる――。知識として知っていたお菓子の背景にある物語を、アマン東京ならではの特別な表現で、五感を使って贅沢に“答え合わせ”ができたような素晴らしいひとときでした。
■ 充実のフリーフローと美しい眺望に酔いしれる2時間
ビュッフェ台に並ぶドルチェだけでなく、目の前で仕上げてもらえる「ミニパルフェ」のパフォーマンスもあり、特別感をさらに演出してくれます。

また、「アルヴァ」ならではの洗練されたセイボリーやパスタ、厳選されたハーブティーなどのドリンクもフリーフローで愉しめる充実の一内容。33階からの息をのむような美しい眺望とともに、至福の2時間を過ごすことができました。
■【不定期開催】伝統とパティシエの技に触れる特別な時間をあなたも
今回初めて『ドルチェ in アルヴァ』に参加させていただきましたが、単に「美味しいスイーツを食べる」だけではない、その背景にあるイタリアの文化や伝統、そして素材の魅力を丁寧に引き出すパティシエの技巧に触れられる、非常に価値のあるイベントだと強く実感しました。スイーツ好きはもちろん、食の文化を深く愉しみたい方にこそ、ぜひ体験していただきたい世界観です。
今回の『インフィオラータ』は終了してしまいましたが、このドルチェビュッフェは、毎回異なるテーマで不定期に開催される特別なイベント。
次は一体どんな驚きと、美しいイタリアンドルチェに出会えるのでしょうか。今から新たなテーマでの次回開催が待ち遠しくてなりません。みなさんもぜひ、アマン東京「アルヴァ」が贈る特別なビュッフェの最新情報を公式HPなどでこまめにチェックして、五感で楽しむ感動のひとときを体験してみてくださいね!
【レストラン情報】
場所: アマン東京33階 イタリアンレストラン 「アルヴァ」
お問い合わせ: 03-5224-3339 (10am – 7pm)