安孫子宏輔の「あびこ菓子」 〜幸せって食べたら甘いと思う。〜 #004ゆべし

※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。


安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 連載4回目にして遂に和菓子が登場! 「ままどおる」「薄皮饅頭」と並ぶ福島県のソウルスイーツ「ゆべし」を紹介します。

第4回 安孫子さんとゆべし

――今回のテーマは「ゆべし」ですが、選んだ理由は何ですか?

僕の中で「ゆべし」は福島の人気のお土産なんです。あまり甘くないせいか30代・40代の人に喜ばれますね。ことあるごとに買っていたんですが、先日調べてみたら、どうやら「ゆべし」という言葉が指す食べ物が、地域によって違うことがわかって驚きました。

――確かに、三角形のゆべしは初めて見ました。

三角形のは「家伝ゆべし」って言うんですけれど、中にあんこが入っていて、福島の人はゆべしといえば、これを指します。

自ら福島県のアンテナショップに行って購入してきてくれた、かんのやの「さくらゆべし」と「家伝ゆべし」。下が安孫子さん手作りの「くるみゆべし」。

――知らなかったです。個人的には胡桃が入った「くるみゆべし」のイメージが強いです。

ゆべしって漢字で「柚餅子」と書くように、もともとは柚子が採れる地域で作られた保存食が発祥のようなんです。柚子の中身をくり抜いて、味噌やくるみとかをいろいろ詰めて乾燥させて、薄くスライスして、お酒のおつまみとして食べられていたらしく、それがどこから転じたのかわからないですけれど、餅菓子になったようで。

大阪とか九州の方に「ゆべしって知ってますか?」って言ったら、多分別のものを想像するんだろうなと思うとおもしろいですよね。そこで、ゆべしについてぜひ語らいたいなと(笑)。

補足:全国「ゆべし」あれこれ
福島県でゆべしといえば、主にかんのや(福島県郡山市)の「家伝ゆべし」を指すのだそう。醤油風味の上新粉の生地にこし餡を包んだもので、芥子(けし)の実がアクセントになっている。同じ東北地方でも他県では、四角くカットされたものを思い浮かべる人が多い。醤油風味の餅粉の生地に胡桃を混ぜた「くるみゆべし」、生地に黒胡麻を練り込んだ「胡麻ゆべし」が人気を二分しており、いずれも柚子は使用していない。
それに対して、本物の柚子を使っているのが石川の「丸柚餅子」。中身をくり抜いて皮だけになった柚子を器(柚子釜)にして、餅だねを詰めて蒸し、半年ほど熟成させた一品。他には柚子風味の求肥タイプなど、さまざまなゆべしが全国に存在している。

――今回、手作りくるみゆべしをご持参くださいましたが、作ってみていかがでしたか?

今回初めて作ったという「くるみゆべし」。「生地に醤油を使っているスイーツは珍しいのでは?」と安孫子さん。

思ったよりシンプルな材料で、すごく手軽に作れました。白玉粉と黒砂糖とくるみだけ買えば、あとは、家にある片栗粉、醤油だけで作れます。

作り方も簡単で、白玉粉と黒砂糖を水で混ぜて、くるみを入れて、電子レンジでチンして、あとは冷やすだけでいいんですよ。

これは一回覚えてしまえば、材料さえあればいつでもパパッと作れます。

今度は家伝ゆべしもチャレンジしてみたいですね。

――そこまで作れたらすごいですね。

そうですね。一体何を目指しているのかって話になりますけど(笑)。

もし記事を読んでゆべしが気になったら、レシピを調べてみてください。直ぐ作れます。分量さえ合っていれば、多分失敗しないんじゃないかな。

簡単に作れるので、もしかするとブームになるんじゃないですか? 

ぜひ作ってみてほしいですね。

――今回の連載を通して、火がつくかもれしませんね。では、最後にゆべし回の締めの一言をお願いします。

ゆべしといってもこれだけ種類があり、その数だけこだわって作っている職人さんがいると思うと、本当におもしろいですよね。

一人ひとり思い浮かべるものが違うと思うと、ゆべしが多様性というか、常識が常識じゃないことを教えてくれました。

これでまたひとつ人間として成長できたと思います(笑)。

――ありがとうございました。


※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。

撮影:曽我美芽