葉山のアトリエ「RainbowCaravan」でお菓子と自家製酵母パン教室を主宰。独自のセンスとおおらかな人柄にファンが多く、お菓子教室や書籍のレシピ考案の他、ファッション・音楽イベントや人気カフェでのケータリングなど、多方面で活躍されている、石井織絵さん。このたび、かわいいナチュラルスイーツレシピ本『にじいろのおやつ』を出版されました。シンガーのUAさんおすすめの本で、卵、乳製品を使わない、可愛くてカラフルなお菓子のレシピ本です。石井さんがパティシエを目指したきっかけから、ナチュラルスイーツ、アトリエ主宰など、様々な活動をされている現在に至るまでのことをお伺いしました。
Profile 石井織絵(いしいおりえ)
横浜県横須賀生まれ、横浜育ち。辻製菓専門学校卒業後、レストランパティシエとして伝統的な洋菓子の製造勤務。体調を崩して、退職後マクロビオティックを学び、「ナチュラル&ハーモニック プランツ」のパティシエとして自然素材を使ったお菓子・デザート・パン教室の講師を担当。ハワイ島ジンジャーヒルファームにて1シーズン過ごし、パーマカルチャーやヨガやフラなどに触れ、自然と調和したお菓子作りを広く伝えようと独立。2014年葉山の海辺の家にてアトリエ「RainbowCaravan」を開く。お菓子教室や書籍のレシピの考案、の他、音楽イベント、人気カフェでのケータリングなど多方面で活躍。
■「Rainbow Caravan」
http://www.rainbowcaravan.com/
――石井さんがパティシエを目指したきっかけを教えてください。
石井「3歳か、4歳くらいの頃、いとこのお姉さんと作ったのをきっかけに、お菓子作りの楽しさ、そして見せてもらったレシピ本の中のお菓子の可愛さの虜になりました。小さいうちからお菓子屋さんかお花屋さんになるのが夢で食いしん坊だったのでお菓子屋さんを目指すこととなりました」
――パティシエとして働いているときに、体調を崩されたということですが、体調を崩されたときのご様子、その後マクロビオティックを学び、変化したことを教えてください。
石井「突然ひどい下血があり、それが毎日続いて2か月くらい『普通ではない』と思いながらも誰にも相談できず、仕事を続け、ある日一人では抱えきれなくなり、仕事中に泣いて病院に行かせていただきました。潰瘍性大腸炎の疑いで、ストレス、食物繊維、立ち仕事、刺激物……とにかくダメなものばかりだったので、仕事をあきらめ闘病しました。その後、薬の副作用もあり、すごく太ってしまい悩んでいたところ、姉がもう10年以上前にやっていたマクロビオティックを「痩せるなら」、と私も始めてみました。そうしたら3か月で劇的に良くなり、下血もとまり、はじめて心と体と食べ物とが自分のなかでつながって、「食べたもので自分はできていたのだ」と食の大切さに気づいたんです」
――「ナチュラル&ハーモニック プランツ」のパティシエとして、自然素材を使ったお菓子・デザート・パン教室の講師をされていたときの様子を教えてください。
石井「自然食材を使っていると、季節で生クリームの色が違ったり(牛が食べる牧草の状態によるため)、季節によっては柑橘しかない時もあったり。商品が一年中均一化された、いわゆる普通のスーパーとは、質や品揃えが違うので、ダイレクトに季節感や、牛の健康状態などを感じることが出来ました。安心安全な食材が使いたいけど手に入らないときは、工夫して代わりになる方法を試したり、天然菌の発酵食品や、野菜をお菓子に積極的につかったりと、大変だけど、面白いお仕事が出来たと思います。お菓子教室では植物性のお菓子を中心に教室を行いましたが、多くの方から求められている内容なんだと実感しましたね」
――その後、ハワイ島・ジンジャーヒルファームにて、過ごされた時間はどのような時間でしたか?学んだこと、感じたことを教えてください。
石井「自然栽培の野菜を販売する会社が運営するレストランで働いているのに、私は当時ニンジンの花も知らないし、大根の種も見たことがありませんでした。それをもっとコアなところまで知ることが出来たのがジンジャーヒルファームでした。電気のない部屋で暮らし、鳥の声と朝日で起きて、夜は満点の星の中で眠る。大地の上にすわり、草むしりの休憩中に目に入るのは、虫のさまざまな活動、見上げるほどおおきなパパイヤの木。いちじくの木によじ登って果実をもぎ、マングースに食べられる前にマンゴーを拾い、大きな大きなレモンの木から収穫したばかりのレモンでお料理をする。雨が降り、大地がぬれ、木々が育ち、やっと葉や実をいただくことが出来る。食べるって、生きるってこういうことなんだ……。お菓子にもそういった背景を込めたいと思うようになりました」
――2014年に葉山の海辺の家にアトリエ「Rainbow Caravan」を開かれたきっかけを教えてください。
石井「ハワイ島から帰ってからは、『お菓子を教える環境も大切だ』と思うようになりました。とくに3.11の震災があってから、もっと命に近いことを仕事にしたほうがいいのではと悩んだこともありました。でもお菓子は主食じゃないから生きていくうえでは絶対ではない。けれど、心を豊かに、気持ちをやわらかくしてくれるもの。『植物性でもカラフルで夢のようなお菓子をつくりたい』『お菓子作りの手を止めたとき、ふと目に入るのは大きな海』。そんな環境を生み出したいと思っていたところ今の物件に出会い、ここでできることをシェアさせていただいています。いつか、開けた山の中のお家で、自分で果樹や、お花やハーブを育て、収穫するところから教室をやりたいと思っています」
――また、石井さんはファッションや音楽、お菓子以外のフィールドでも幅を広げて活動されていますが、最近の活動、またフィールドを広げた活動の楽しさ、魅力などを教えてください。
石井「もともと音楽ではDJやVJを、スポーツではフラダンスやスケボーをやっていました。どれもお菓子作りには関係ないように思われるかもしれませんが、レゲエを聴きながら、ラスタカラーのパンを作ったり、ハワイ島ではざらざらの赤い砂の大地に立ったときに、少し塩のきいたチョコクランチが思い浮かんだり。お菓子だけ、と区切らずに感じた事思ったことをいろんな方法で表現したり、伝えられたらと思います。現在は、衣食住、なるべく自然に寄り添ったライフスタイルを提案していく活動もしています。例えば、(殺したり無理やり抜いたりせず)自然に抜け落ちた鳥の羽根でアクセサリーを作ったり、子どもが作れる羽根冠や、花冠をつくるワークショップを行ったり。8月はこちらに講師として参加します」
――今回発売された『にじいろのおやつ』は、卵・乳製品を使わないナチュラルスイーツを紹介されていますが、この本を出したきっかけ、本書の魅力を教えてください。
石井「近しい関係のなかで、重度の卵アレルギーの子がいたり、お菓子を食べたくても食べられない子どもがたくさんいることを知り、子どもが喜ぶような、かわいい、カラフルなお菓子ができないかなと考えるようになりました。ですが販売するとなると、実際は子どもたちが食べるのには高価なお菓子になってしまいます。ですので、『母親が自分で素材を選んで作ることが出来たら一番いいな』『どこか出版させていただけるところはないかな?』と、自分で知人に声をかけて動いたのがきっかけです。お子さんがいる世代だけではなく、自分のイマジネーション次第で、いろいろと面白いお菓子が出来る、そして、ここからオリジナルのレシピが産まれ、家庭の味になっていったら……という想いを込めて作らせていただきました」
――最後にスイーツファンに向けて、メッセージをお願いできればと思います。
石井「お菓子作りは難しいと思っている方もたくさんいると思います。
でも植物性素材で作るお菓子はとっても簡単です。さじ加減を覚えれば、レシピ通りではなく、自分だけのオリジナルを作ることもできます。色やモチーフ、かわいい♡と思えることをぜひ想い描き、このレシピ本で基礎を覚えたらどんどん飛び出していってくださいね」
にじいろのおやつ
著者:石井織絵
出版社:WAVE出版
発売日:6月5日
UAさん(シンガーソングライター)推薦!
「愛100%な おかしとパンは とびきりの美味しいアート
まごころが織りなす虹色が ミライを育てるよ
You Are What You Eat ???」
卵、乳製品を使わない、かわいいナチュラルスイーツレシピ。野菜・花・スパイス・ハーブでつくるトキメキのスイーツ。忙しい人でも、親子で作れる簡単レシピが大集合。クッキー、クラッカー、マフィン、タルト、スコーン、パン、魔法のケーキなど、可愛くてカラフルなのに、卵、乳製品不使用だからアレルギーのあるお子さんにもオススメです。