安孫子宏輔の「あびこ菓子」 〜幸せって食べたら甘いと思う。〜 #010 マカロン

※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。


安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 今回はマカロンをテーマにエッセイを書いてもらいました。

マカロンにもいろいろ種類はありますが、最も馴染み深いのがカラフルなマカロン・リス(=マカロン・パリジャン)ではないでしょうか。材料は粉末アーモンドと粉糖と卵白。表面はツルッとなめらか、ピエと呼ばれる「足」(マカロン下側部分)が出るように焼成するのが難しいそうです。中身はバタークリームやジャム、ガナッシュなど。こちらも色鮮やか。気分を上げてくれるスイーツなので手土産で持っていくと喜ばれます。


第10回 安孫子さんとマカロン


おとぎ話の世界から出てきたようなカラフルな様が目にも楽しく、口にすれば軽く心地よい食感の後、解けるように幸せな甘さが口の中に広がっていく。

この丸くて見目可愛らしいスイーツを思う時、僕は必ず自らが所属するCandy Boyが共に思い浮かぶ。

というのも、僕がマカロンを意識するようになったのが丁度Candy Boyに入った頃だったからだ。

2015年頃、Instagramが日本でも本格的に流行して、可愛らしいスイーツを投稿する人が激増した。そこで一役買ったのがマカロンだ。

原型となる菓子は古代ローマ時代に作られており、16世紀にフランスに伝わり、1930年には今の形(マカロン・パリジャン)になったとされるこの歴史ある菓子はInstagramの普及とともに”可愛いお菓子”として日本の若年層にも広く定着した。

同じく2015年、フレンチを一つのテーマとするCandy Boyとして活動するようになった僕は、フランスの文化やスイーツと接する機会が多くなり、フランスを代表する菓子として真っ先に認知したのが世を席巻していたこのマカロンだった。以来カフェ公演で提供するスイーツを監修するようになってからも、スイーツコンシェルジュになってからも常に視界の片隅にマカロンがあった。

出会った頃、少し気取った印象だったその洋菓子は、この5年で僕にとって身近で親しみやすいものになった。僕はマカロンが大好きだと言う訳ではない。けれど無くなったら悲しく思うし、これからも近しいものであって欲しいと思う。僕にとってマカロンは友達以上恋人未満、そんな存在だ。願わくばマカロンにとって僕もそんな存在でありたい。なんて思ってしまうのは欲張りなのだろうか。
僕は一体何を言っているのだろうか。

食べ物にも見た目を求めるのが常識となっているこの時代、この可愛らしいフランスを代表する菓子はこれからも幾度となく人々を魅了し、沢山の人の心に棲み続けることだろう。


※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。