安孫子宏輔の「あびこ菓子」 〜幸せって食べたら甘いと思う。〜 #021 映画「ノッティングヒルの洋菓子店」エリザ監督にインタビュー

※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。


安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 今回はなんと12月4日より公開される映画「ノッティングヒルの洋菓子店」の監督・エリザ・シュローダーさんにオンラインインタビュー。


STORY

ロンドン、ノッティングヒル。名店で修行を積んだパティシエのサラと親友のイザベラの2人は、長年の夢だった自分たちの店をオープンすることに。ところが事故でサラが急死。夢を諦めきれないイザベラとサラの娘クラリッサは、絶縁していたサラの母ミミを巻き込んで、パティシエ不在のまま開店に向けて走り出す。そんな3人の前に現れたのは、ミシュラン二つ星のレストランで活躍するスターシェフのマシュー。20年前、ガールフレンドだったサラから逃げた過去を持つ彼は、あることを償うためにパティシエに応募してきたのだ。それぞれの想いを抱えた4人は、果たしてサラの夢を叶えることができるのか――。


第21回 安孫子さんとエリザ監督

東京⇔ロンドンでオンラインインタビュー。

安孫子 「ノッティングヒルの洋菓子店」を見させていただきました。

きれいな街並みとおいしそうなお菓子が印象的だったのですが、監督はなぜこの映画を撮ろうと思ったのですか?

エリザ監督 もともと私はノッティングヒルに住んでいるんです。

きれいな街並みだとおっしゃっていたんですが、やっぱり場所からインスピレーションを受けたんですね。

パティスリーもベーカリーもたくさんあるんです。

協力していただいたオットリンギさんは特にお気に入りで、近くに住んでいることもあって、一番のお客さんといえるくらい大好きなんです。

そこから始まりました。

安孫子 なるほど。この映画には監督の好きなものが詰まっているんですね。

エリザ監督 その通りなんですよね。自分が好きなトピックを敢えて選びました。自分自身もお菓子作りが好きで、スイーツも大好き。なので、自分が食べたいと思うようなお菓子をしっかり撮らなければ、と思いながら撮ったんです。

安孫子 映像から街とスイーツへの愛が伝わってきました。本当に美しく撮られているなと思いました。ノッティングヒルの街や人々の生活の様子がとてもリアルに感じられたのですが、実際もそうなのですか?

エリザ監督 そう思っていただいていいです。朝ランニングをしていたときにちょうどこのことを考えていたんですよね。このノッティングヒルのエリアをそのまま撮りたい。でも観客の方を夢にいざないたいじゃないですか。なので、リアリティというのも全てそのまんまというわけではなく、映画的に撮れるようにと考えなから撮りました。

安孫子 監督が思うノッティングヒルの一番の魅力は何ですか?

エリザ監督 すごく文化が多様なところが魅力ですね。

文化的にも宗教的にも、いろいろな背景をもった方々がたくさんいて、すごく豊かな文化が集まっている場所でもあります。それがヨーロッパでもユニークだなと思うんです。

あとは色彩も好きです。春は木の色であったり、家もカラフルで街並みも好きです。

安孫子 まさに映画そのままの街なんですね。

エリザ監督 そう言っていただいてすごく嬉しいです(笑)。

安孫子 行ってみたくなりました。

エリザ監督 私たちを訪ねに来てね(笑)。

安孫子 ぜひ行きたいです(笑)。

さきほどスイーツを作られるという話をしていらっしゃいましたが、監督にとってスイーツとは?

エリザ監督 私にとってスイーツは「家族をつなげてくれるもの」ですね。

自分の子どもたちと一緒に作るものですし、私は大家族で育ったのですが、常に誰かが何かを作っているようなお家でした。

なので、スイーツは温かみであり、喜びであり、家族を一つにしてくれるものなんです。

あとは、この映画を通してスイーツがそれぞれの国の文化を定義付けてくれるものであると。

こういう文化ですと、スイーツを見ればわかることかわもわかるように、いろんなスイーツを敢えて登場させてカルチャーに触れてもらえたらなと思ったんです。

安孫子 なるほど。すごく素敵だなと思います。

撮影に使用したスイーツはみなさんで食べられたんですか?

エリザ監督 今回はかなりの人数のスタッフ、キャストがいたんですね。

で、みんなが常にスイーツを横目で見ている感じの現場で。いつも「食べられない?」って言われるんですけれど、翌日も撮影で使うんですよ。

なのでフレッシュに見えるように特殊なプレーを使って撮影しました。

で、最後の撮影のときに「食べられませんか?」って聞かれたんですけれど、食べられるかもしれないけれどお腹壊すかもねっていうことで、新しいケーキを買ってみんなでお祝いしました(笑)。

安孫子 素敵! 

あれだけおいしそうなものに囲まれるとお腹が空いてきますよね。生殺しの状態ですよね、役者は(笑)。

エリザ監督 そうなのよね。娘が二人いて作品にも登場しているんですが、テイクのたびにケーキを戻されちゃうので、5歳の娘が5テイク目くらいで怒っちゃって「いつ食べられるの、ママ!」って。

撮影の後に旦那さんがケーキ屋さんに連れていきました(笑)。

安孫子 とても賑やかな現場だったんですね。

作品に世界のスイーツが登場したわけですけれど、監督の故郷のお菓子といえば何でしょうか?

エリザ監督 ドイツってすぐに他の国のものを模倣してしまうの(笑)。

そんな中でもシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテが一番多いですね。あとはブラウニーがたくさん作られています。

安孫子 僕が所属するCandy Boyの公演では、演目が始まる前にスイーツを提供するんです。

そのときに、僕が世界中のお菓子の中から題材を選んで、僕が監修してお店に作ってもらって提供したことがあるんですが、一度シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテをテーマにしてお客様に提供したことがありました。

ドイツのお菓子といえばその印象が強かったので、嬉しく思いました。

エリザ監督 私も嬉しいわ(笑)。

安孫子 監督が普段作るスイーツは何ですか?

エリザ監督 チョコチップクッキーとブラウニーは世界一よ(笑)。

安孫子 ぜひ食べたいです(笑)。

エリザ監督 秘密のレシピなんだけれど、毎回ちょっとずつ変えるんです。

安孫子 へぇ~。

ところで、監督は来日したことはありますか?

エリザ監督 残念ながらまだ行けてないんです。旅に行けるようになったらすぐに行ってみたいです。

安孫子 好きな日本のスイーツはありますか?

エリザ監督 知識が実はちょっとしかなくて、前、誰かに勧めてもらったのがすごくおいしかったんだけれども、名前を忘れてしましました。

なので、せっかくスイーツコンシェルジュさんなので、お勧めがあればロンドンで探してみます。

安孫子 やっぱり日本の和菓子。クリームではなく、あんこを使った文化なので、大福とかを食べてみてほしいですよね。

エリザ監督 しっかりメモしたいと思います。

安孫子 映画には日本のケーキとして「抹茶ミルクレープ」が登場していますが、実は日本発祥であることはあまり知られていないんですよ。

エリザ監督 今回はフードスペシャリストのアドバイザーがついてくれていて、各国のケーキをリサーチして持ってきてくれたんです。

日本はエレガントな、ディテールにしっかりこだわって物作りをするというイメージがあったので、それが表現されているのがいいなと思って選びました。

デリケートで作るのがすごく大変。それが私にとってはエレガンスと洗練された物作りを感じさせるものだったので選んだんです。

安孫子 映画の中でとても重要なポジションのスイーツとして日本のケーキが出てきたので、見ていて嬉しい気持ちになりました。

エリザ監督 実はコーディネーターの方が別の案も出してくださっていたんですね。でもこれが私に一番ピタッと来たし、キャラクターの関係性がここで特別に生まれるという意味でうまくハマったケーキでした。

安孫子 日本人として映画に対して親近感がわきました。

スイーツってどの国にもあって、その一つ一つに愛や思い出がある。だからこそ、この映画は国境を超えて共感を呼ぶんだと感じました。

監督の愛が詰まったこの作品が、スイーツのように世界中の人の人生に結びついてほしいと願っています。

本日はありがとうございました。

エリザ監督 ありがとうございました。

エリザ監督と画面越しに記念撮影。

監督・キャスト
監督:エリザ・シュローダー 
出演:セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コン、ルパート・ぺンリー=ジョーンズ
フィルムデータ
イギリス映画|英語|2020年|98分|デジタル5.1ch|ビスタ|原題:Love Sarah|日本語字幕:松浦美奈
提供: ニューセレクト 
配給: アルバトロス・フィルム  
HPアドレス: nottinghill-movie.com


※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。