※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。
安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 今回のテーマはアイスクリームにエスプレッソを掛けて食べるイタリアのドルチェ「アフォガート」。おいしさの理由について語ります。
第6回 安孫子さんとアフォガート
――今回はテーマが「アフォガート」ですが、ずっと「アフォガード」だと思っていました。
僕もです。イタリア語の表記はaffogatoなので、「ド」ではなく「ト」なんですよね。「溺れた」という意味だそうで。
――そうなんですね。テーマに選んだ理由は何ですか?
これはですね、僕がコーヒー好きだからなんです。エスプレッソとか好きで。
「おいしいもの」に「おいしいもの」を掛け合わせているわけなんで、まぁ、おいしいよなっていう。そんな夢のような食べ物だと。
簡単に作れる割に、あまり見かけないというか。もっとあったら嬉しいなっていうこともあって選びました。
スターバックスとかでアフォガートを出してくれたら嬉しい! エスプレッソ自体がおいしいから。
―― (マネージャー)スターバックスにアフォガートありませんでしたっけ?
アフォガートですか? 本当に?
―― (マネージャー、スマホで検索)エスプレッソ アフォガート フラペチーノがありました。
それ、フラペチーノじゃないですか! アフォガートじゃないじゃないですか!
だって、チーズケーキフラペチーノはチーズケーキじゃないじゃないですか!
――確かに。
はい、論破しました! (笑)
――完璧な論破でしたね。
気持ちよかったです(笑)。
(編集補足:後ほど調べてみたらアフォガートも販売していました)
--アフォガートの好きなところは何ですか?
味の組み合わせじゃなくて、冷たいアイスクリームと温かいエスプレッソの温度での組み合わせっていうのが、 面白いなって思ったんですよね。それもまたおいしく感じられるポイントなんだろうなって。「熱い!」ともならない、あの絶妙な感じが楽しいんですね。
全然関係ない話になるんですけれど、僕、つけ麺がけっこう好きなんですね。温度のちょうどいい感じが。
人間っていうのは、「ちょうどいい」ということに気持ちよさを感じるんだなと。
甘すぎるスイーツって、2口目は飽きちゃいますよね。
でも、本当においしいスイーツって、ちょうどいいというか、なんか言葉に形容できなくなるんです。ただの甘さの具合というわけでもないし、要するに、ちょうどいいしか言えなくなるんですけど。
それがなんか、温度でも感じられるのがアフォガートなんです。
ちなみに、アフォガートってエスプレッソじゃなくてもいいんですよ。
――知らなかったです。
衝撃ですよね。コーヒーじゃなくてもいいならコーヒーが嫌いな人でも楽しめるし。お家でパパッと作れるので家庭ごとの楽しみもあるし。もっと生活に馴染みそうなスイーツだなって思って、いろんな組み合わせをこれから 試してみようと思っています。
――もしかすると、アフォガートの第一人者になれるんじゃないですか?
あら、まだ空いてます? アフォガートの火付け役(笑)。
お菓子作りの場合、材料をいろいろ買ってきたのに失敗するとショックじゃないですか。強力粉とかしばらく使わないうちに期限が過ぎちゃうこととかも、よくありまよね。
でも、アフォガートだったら、普通にそのままでも食べられる「おいしいもの」と「おいしいもの」を組み合わせただけの物だから、誰でも簡単に作れますよね。初歩的というか、お菓子作りの入口としてもいいと思います。
自分で何か組み合わせてみたりするというのも面白いじゃないですか。
――一つ思いついたんですが、エスプレッソにゼラチンを入れるのはいかがでしょうか?
うわぁー、罪なことしますね。
最初は液体だったものが、冷やされてゼリーになるってことですよね。それは面白い、液体、固体、忙しいですね。温度もそうだし、液体、固体もそうだし、最終的には両方混ざり合って、いろんな境界がなくなるスイーツですね。
僕は日本酒でいろいろ試そうと思っています。
――日本酒、お好きなんですね。
僕、福島出身なので。福島って日本酒が七年連続日本一なんですよ。お酒の評議会で金賞を受賞した数が一番多いのが福島なんですよね。
それだけおいしいお酒がいっぱいあるから、アイスとお酒のベストな組み合わせを探すだけでも相当楽しめますよね。日本酒じゃなくてウイスキーとかグラン・マルニエとかもいいですよね。
アイスと飲み物の組み合わせによっては、子どもから大人まであらゆる世代に好まれるスイーツかも。
――そうですね。
大人は忙しいから、気軽に甘いものとお酒を使ってスイーツがパパッと作れるところがいい。
――ところで、エスプレッソはお家でも飲みますか?
近い未来には解禁するんですけど、エスプレッソマシーンはあるのですが、タンピングってコーヒー粉を詰める作業をやったことをなくて。こだわる人はすごくこだわるじゃないですか、気圧が低いときはこうするとか。
素人がおいそれと手を出しちゃいけないと思って(笑)。エスプレッソマシーンを知り合いに貰ってから1年くらい手つかずなんです。
これを機に僕はエスプレッソを淹れます。そしたらアフォガートを作り放題です(笑)。
――では、最後にアフォガート回の締めをお願いします。
人は「ちょうどいい」というのが気持ちいいと感じるのだと思います。
アフォガートは「冷たい」と「温かい」のちょうどいいところがあったり、「固体」と「液体」、「甘さ」と「苦さ」のちょうどいいところがあったりして、境界がすごく曖昧になるスイーツ。
まさに色んな「ちょうどいい」の要素が集まっているものだから、人はおいしいと感じるのだなと思います。
組み合わせは無限大で、自分のオリジナルの楽しみ方を追究できるし、おすすめの組み合わせを教えてもらったらすぐに作れる手軽さも魅力だなと思っています。
これは来るな! 来る要素しかない!
――ありがとうございました。
※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。