※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。
安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 今回は番外編として、日本スイーツ協会の会報誌で行った世界ジェラートチャンピオン・柴野大造さんとの対談の振り返り企画をお届けします。
第13回 安孫子さん、対談を振り返る
アジア人初の世界チャンピオン、世界ジェラート大使など、まさに日本におけるジェラート界の権威とも言える柴野さんですが、とても気さくにお話しして下さったので終始笑い声が絶えない対談となりました。
そんな中でジェラートについて語る時は迷いや曖昧さが一切無く、はっきりと答えを言う姿が印象に残っています。
ご自身で経験し、積み重ねて、作り上げた理論とジェラートへの愛が言葉に宿っていて、これ以上ない説得力がありました。
特に印象に残ったのが対談中に柴野さんが何度も仰っていた「ストーリー」と言う言葉。
柴野さんは、ジェラートは0.1gが国際大会での勝敗を分けるほどに科学と理論が重要な食品だとした上で
「材料を作ってくれている生産者のストーリーを含めて、どれくらい素材や自分と向き合ったかがその一口に全部現れる。そこは科学ではない。作り手の作品の背後に何があるのかが説得力になり、見えないところの背景が大切」
と語ってくれました。これを聞いた時、僕は役者の人と話しているような錯覚に囚われました。それほどに役者が役を演じる上で大切だと思っていることと同じだったのです。
どれだけ役と向き合ったか、台本に描かれていないバックボーンをどれだけ作ったか、そう言うものが芝居に表れる。だからその時だけやろうとしてもダメで、準備が大切だと僕は思っています。
世界の頂点に立った柴野さんの口からそんな言葉を聞いて、驚くとともに表現が違うだけで「核」となるものは同じなんだなと、嬉しいような勇気をもらえるような気持ちになりました。
試食したジェラートを振り返る
能登プレミアムミルク
お店ではもっとふわっとしているとのことですが、カップアイスでも驚きの滑らかさ。牧場の牛乳100%で作られており、季節ごとに変わる脂肪分を計算して作られているこだわりが現れています。普通のミルクジェラートと明らかに一線を画す味わいに口に入れた瞬間にやけてしまいました。
能登の塩
より強調されたミルクの甘みの後はっきりと伝わってくる塩の味わいにスプーンを持つ手が止まらなくなりました。
売り上げが厳しかった時代の冬場、わかめや岩のりなど日本海の海の幸を使ってひたすら商品開発をして、その時に生まれたヒット商品。そんな柴野さんのドラマを聞いてから食べると、一口一口が大切に、より美味しく感じられました。
グランピスタチオ
世界大会で10位に入り、自信を持つきっかけとなったというジェラート。焼き立てのピスタチオを食べたかのような香ばしさが突き抜けてくるのに口の中は冷たい。魔法にかけられたような不思議な体験をしました。チャンピオンマジック恐るべし。
マスカルポーネとオレンジバニラ
口に入れた瞬間にまるでアロマのようにオレンジ香りが広がって、香りとともに味わいが変化して心地良い余韻が続く。マスカルポーネと相性の良いベリーソースを絡めると、さらに変化を楽しめる。たった一つのカップに詰まった驚きの連続に感動を覚えました。
グランショコラ
牛乳を使っていない氷菓にもかかわらず、驚きの滑らかさ。上質なカカオを存分に感じることができる、エレガントな一品。食べているだけでワンランク上の大人になったような気分になりました。
パイン・リンゴ・セロリのソルベ
世界チャンピオンに輝いた柴野さんの代名詞。文章を書いていて言うのはなんですが、このフレーバーばかりは食べて「五感で体験」をしないと伝わらないというか、伝える事がとても難しいと感じました。
3つの素材の味がここしかないというところで一つにまとまって新たなとても美味しい味として生まれ変わっています。綿密な計算の上に成り立っている奇跡のようなジェラートです。
MALGA GELATO(マルガージェラート)
http://www.malgagelato.com/
能登本店|石川県鳳珠郡能登町字瑞穂 163-1
野々市店|石川県野々市市野代 1-20-101
※オンラインショップでも購入可能です。
撮影|伊藤 駿
※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。