世界と日本の歴史から紐解く現在地。池袋の新名所から西新宿の熱狂まで

一時の爆発的な「映え」や行列ブームを経て、私たちの日常に上質な選択肢として完全に定着したパンケーキ。しかし、その物語はここで終わりではありません。現代のライフスタイルやグローバルカルチャーの変容とともに、パンケーキは今、まったく新しい「新章(ニューフェーズ)」へと足を踏み入れています。
単に「甘いスイーツを消費する」という目的から、ブランドの美学を感じる全方位型の空間体験へ。そして、多様な文化やインバウンドが交差するグローバルな交流拠点へ――。
今回は、パンケーキの歴史的背景を紐解きながら、2026年7月17日に池袋サンシャインシティへ誕生した注目の大型複合型カフェ『JOURNAL STANDARD CAFE』を軸に据えつつ、西新宿の『Bam Bi COFFEE』の現場で見えた熱狂まで、現代の「カフェスタイル・パンケーキ」のの現地取材を通し、進化し続けるパンケーキの今を深掘りします。
【歴史的考察】パンケーキの歩み〜古代の主食から、日本の「スフレ文化」への昇華〜

パンケーキのルーツは極めて古く、古代ギリシャ・ローマ時代にまで遡ると言われています。
当時は小麦粉と水を混ぜ、オリーブオイルやハチミツを加えて熱したプレートで焼いた素朴な料理であり、古代ギリシャ語で「フライパンの焼き菓子」を意味する『タゲニタス(Tagenitas)』などがその原型とう説がある。その後、中世ヨーロッパや19世紀のアメリカを経て「パンケーキ」という文化が定着。
アメリカでは手軽な朝食の代名詞となり、イギリスではキリスト教の伝統行事「パンケーキ・デイ(告解の火曜日)」に代表されるような、暮らしに根ざした食文化へと発展していきました。
日本におけるパンケーキの「独自のガラパゴス的進化」
日本でパンケーキが本格的に登場したのは1923年(大正12年)。デパートの食堂などで「ハットケーキ」という名で提供されたのが始まりとされています。
その後、昭和初期(1931年)に「ホットケーキの素」が登場し、戦後の高度経済成長期における家庭用ミックス粉の普及によって、国民的おやつ「ホットケーキ」としてのポジショニングを確立。
大きな転機となったのは2008年以降の空前のパンケーキブームです。『Bills』や『Eggs ‘n Things』に代表されるハワイアン・カジュアルダイニングの進出を皮切りに、2010年代半ばには日本独自の高い製菓技術(メレンゲの緻密な泡立てや厳格な温度管理)を駆使した『ふわふわ食感のスフレパンケーキ』が誕生。世界中の美食家を驚かせる、繊細なスイーツへと昇華を遂げました。
そして2026年現在。パンケーキは「一過性のトレンド」を越え、カフェのコンセプトやライフスタイル、さらには異文化融合そのものを象徴する「食の表現メディア」へと移行しています。
【店舗取材1】2026年7月17日オープン! 池袋『JOURNAL STANDARD CAFE』

「ウェルビーイング」をテーマに掲げる、ベイクルーズの食の美学が集約されたオールデイカフェ
《店舗概要》
・店名:JOURNAL STANDARD CAFE(ジャーナルスタンダードカフェ)
・オープン日:2026年7月17日(金)
・場所:東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャインシティ アルパ 3F
・営業時間:スタンド 11:00~20:00 / カフェ 11:00~22:00(L.O. 21:00)
・業態:デリスタンドとラウンジカフェを融合した「ウェルビーイング」な複合型カフェ
・特徴:全席対応のオールデイダイニング、カスタムティーバー完備

ファッションブランド「JOURNAL STANDARD」をはじめ、長年にわたり衣食住のカルチャーを牽引してきたベイクルーズグループ。同社がアパレルで培った高い審美眼と、これまで展開してきた食のノウハウを結集させ、池袋サンシャインシティにオープンさせたのが『JOURNAL STANDARD CAFE』です。
約94坪の開放的な店内は、クイックな利用やテイクアウトに応える「スタンドゾーン」と、ゆったりと腰を落ち着けられる「カフェゾーン」の2つの空間で構成。「ウェルビーイング」をテーマに、味わいだけでなく美容や健康に寄り添う新たな複合型オールデイカフェとなっている。
名店の血脈を継ぐ「スフレベイクパンケーキ」の製法美

この空間の象徴として提供されるのが、同店のシグネチャーメニュー「スフレベイクパンケーキ」です。
ベイクルーズといえば、パンケーキブームの先駆者である『J.S. PANCAKE CAFE』や、“奇跡のパンケーキ”で一世を風靡した『FLIPPER’S』を成功させてきた、いわばパンケーキ界のトップランナー。今作では異なる魅力を放つ2つのパンケーキを展開しています。
1. シグネチャー「スフレベイクパンケーキ」の技術革新
価格: 単品 1,980円(税込)/ カスタムティーバー付きスペシャルセット 2,970円(税込)

特徴: オーダーごとにメレンゲを丁寧に立てて生地に合わせ、オーブンでじっくり熱を通す「ベイクド・スフレ製法」を採用。一般的なフライパン焼きとは一線を画し、焼き菓子の香ばしさを纏った表面と、ふんわりしっとりとした軽やかな口どけを両立させています。
こだわりのトッピング: 自製「ハニーコームナッツバター」、メープルシロップ、ホイップクリームを添え、バターの香ばしい塩味が生地の優しい甘みを引き立てます。

2. 食感の対比を味わう「クラシックパンケーキ」
価格: 2Pieces 1,540円(税込) / 3Pieces 1,760円(税込)

特徴: ミネラル豊富な甜菜糖や低脂肪のバターミルクなど、素材にこだわった身体に優しいふんわりもちもち食感のバターミルクパンケーキ。サクサク食感がアクセントの自家製ハニーコームバターが添えられています。
さらに、フレッシュフルーツ(+638円)、ジャージーミルク等のダブルアイス(+220円)、ベーコンエッグ(+528円)などのトッピングも充実。食事系からスイーツ系まで自由なカスタマイズが可能です。
カフェゾーンの中央に鎮座する「カスタムティーバー」の全貌

同店舗のシンボルとなるのが、カフェゾーン中央に設置された「CUSTOM TEA BAR(カスタムティーバー)」
【カスタムティーバー】
価格:1,100円(税込)/ 平日ランチタイム限定(11:00~14:00)880円(税込)
システム:フードメニュー注文者限定・90分制(グラス交換制・おかわり自由)
内容:8種類のティー&ハーブティーをベースに、多彩なシロップや炭酸を自由に組み合わせて自分だけのティードリンクをブレンド。

公式レシピ例に見るペアリングの美学
・『バタフライレモネードティーソーダ』: バタフライピー + レモネードシロップ + 炭酸
・『オルジェブレンドアールグレイティー』: J.S.ブレンドティー + アールグレイティー + オルジェシロップ
・『グリーンレモンティー』: グリーンティー + レモンシロップ + ケーンシュガーシロップ
・『フィグルイボスティ』: いちごルイボス + フィグシロップ
焼きたてのスフレベイクパンケーキ(焼き上げに約20分以上)を待つ時間さえも、自分好みのブレンドティーを探求する豊かな「体験」へと変換する、極めて現代的な空間設計を設けている。

【店舗取材2】SNSの熱狂を追って――『Bam Bi COFFEE 西新宿店』市場調査で感じた圧倒的実力

韓国発カフェが魅せる、伝統食材と日本のアプローチが生んだグローバルな化学反応
カフェスタイル・パンケーキの「今」を読み解く上で、決して無視できないのが韓国発カフェカルチャーとの化学反応と、インバウンドによる需要の世界的拡大です。
SNSをリサーチする中、海外からの旅行者やK-カルチャーファンの投稿が格段に多く、気になっていたのが、新大久保で感度の高い層を虜にしてきた人気店『Bam Bi COFFEE』の2号店として誕生した『Bam Bi COFFEE 西新宿店』。

モノトーンとウッドが調和するヴィンテージモダンな店内に足を運ぶと、SNSで情報をキャッチした日本人ファンだけでなく、北米、ヨーロッパ、アジア各国から訪れたインバウンド客たち。異国の言語が飛び交う空間で、誰もが目の前に運ばれてくるパンケーキを前に、目を輝かせて動画や写真を収めている。

SNSの情報を手にした外国人観光客と日本の感度の高い若者が入り交じる空間は、まさに「今」を映し出すカルチャーハブそのものでした。
『Bam Bi COFFEE』に見る、伝統「インジョルミ(きなこ餅)」のモダニズムと、実食した「苺パンケーキ」の圧倒的完成度
なぜ、これほどまでに国境を超えて人々を引き寄せるのか。その背景には、単なる「映え」を超えた文化の文脈化と味覚の計算が存在します。
同店の象徴である「インジョルミパンケーキ」は、韓国の伝統菓子であるきなこ餅(インジョルミ)の要素を、日本で独自発達したスフレ技術と掛け合わせた革新的な一皿。表面に舞う深煎りきなこパウダーと、中から溢れ出すお餅やシナモン香る木の実ソース、冷たい黒糖アイスの組み合わせが「ふんわり・トロッ・もちっ」という3つの食感を生み出しています。
そして、今回一客としてオーダーし、実際に体験したのが季節限定の「イチゴパンケーキ」。

運ばれてきた瞬間、目を楽しませてくれるのは生地を埋め尽くすようなフレッシュなイチゴの鮮やかさ。オーダー後に焼き上げるプルプルと揺れるスフレ生地にナイフを入れると、エアリーな口どけとともに、イチゴの甘酸っぱい果汁と自家製クリームのコクが口いっぱいに広がります。
一見するとボリュームがありますが、生地自体の甘さが計算し尽くされており、重さを一切感じさせません。「SNSで映えるから」という一過性の話題性だけでなく、「確かな製菓技術に裏打ちされた素直な美味しさ」があるからこそ、遠国からの観光客も満足して旅の思い出に刻んでいくのだと、一皿を平らげながら深く納得させられました。

「日本の製菓技術」×「韓国の空間美学」のグローバルな訴求力
訪日外国人観光客にとって、日本の「スフレパンケーキ」は世界に誇るハイレベルな製菓体験(J-Sweets)として高い認知を得ています。そこに韓国カフェ特有の「ストーリー性のある空間」と「伝統素材の再解釈」が加わることで、「今、東京でしか味わえない最高にエキゾチックで洗練された体験」へと昇華しているのです。
言葉を必要としない視覚的な美しさと、食べた瞬間に驚きを与える食感のインパクト。これらがSNSというグローバル言語を通じて拡散され、西新宿というビジネス街に多国籍な長蛇の列を生み出しています。
食文化を繋ぎ、日常を彩る「進化系パンケーキ」の未来
古代の素朴な焼き物から始まり、西洋の朝食文化、日本の職人的スフレ技術、そして現代のライフスタイル・カルチャーとの融合へ―――。
かつての「パンケーキブーム」は、特定の新店舗に行列を作る一過性のブームに過ぎませんでした。しかし2026年現在、パンケーキは「ライフスタイルとカルチャーを映し出す鏡」として、より深く、多様な進化を遂げています。
池袋『JOURNAL STANDARD CAFE』が魅せる、ライフスタイルブランドだからこそ到達できた「食と健康(ウェルビーイング)」が調和する日常の豊かさ。
西新宿『Bam Bi COFFEE』が証明する、伝統素材の再解釈とグローバルな熱狂が生む「国境なきカルチャーハブ」としての可能性。
ただ甘いものを食べて満たされる時代から、その背景にある職人技、ブランドの哲学、そして多様な人々が集う空間の熱気ごと楽しむ時代へ――。
今週末は、進化し続けるパンケーキの「新章」を体感しに、新しい物語が紡がれる一軒へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
そこにはきっと、あなたの知らなかったスイーツの奥深い世界が広がっているはずです。