[佐藤ひと美のスイーツレポート385]一口で、時空とアートを飛び越える。麗しき「美の饗宴」コラボアフタヌーンティー2選

〜ラデュレ×蜷川実花 & ウェスティンホテル横浜×マリー・アントワネット展〜

連日厳しい暑さが続く8月中旬。日常の喧騒から少し離れて、涼やかで贅沢な空間で感性を満たす「非日常のティータイム」はいかがでしょうか。

アフタヌーンティーは今、ただ美味しいスイーツを楽しむだけの時間を超え、圧倒的な世界観の中へとダイブする「没入体験」へと進化しています。

なかでも感度の高いスイーツファンを虜にしてやまないのが、シェフの緻密な職人技と、アートや歴史的背景が高度に交差する「コラボレーション・アフタヌーンティー」。スタンドという小さな舞台の上に構築された美学は、もはや一つの“食べる芸術作品”。

しかし、この完成度に至るまでの道のりは決して容易ではありません。

パティシエに求められるのは、卓越した製菓技術や素材の知識だけに留まらないからです。コラボレーション先が持つ世界観や歴史的背景を深く読み解く『解釈力』、そして先方が求める美学を緻密に分析する『翻訳力』。それらをすべて兼ねそなえた上で、ひとくちの『スイーツ』という小さなキャンバスへ落とし込まなければなりません。

『美しいが味のまとまりがない』『美味しいがテーマが伝わらない』という両極の壁を乗り越え、視覚の洗練と味わいの完成度を完璧に両立させること――。

それこそがコラボアフタヌーンティーにおける最大の難所であり、パティシエの真価が問われる表現の極致なのです。

今回は、色彩の魔術師・蜷川実花氏の妖艶な世界に染まる『ラデュレ』と、18世紀フランス王妃の華麗なる宮廷美学を蘇らせた『ウェスティンホテル横浜』をピックアップ。私の視点から、一口で日常を忘れさせる至高の「美の饗宴」へと皆様をご案内します。

  

【1選目】ラデュレ × 蜷川実花

フューシャピンクに染まる「真夏のエデン」。伝統のメゾンと極彩色の美学が交差する瞬間

1862年にパリ・ロワイヤル通りでブーランジェリーとして産声を上げ、のちにパティスリー、そして「サロン・ド・テ」へと進化を遂げた伝統と格調のメゾン『LADURÉE(ラデュレ)』。その気高き美学を受け継ぐ「ラデュレ日比谷店」にて、2026年7月3日(金)から9月17日(木)までの期間限定で開催されているのが、写真家・映画監督の蜷川実花氏とのコラボレーション『アフタヌーンティー “mika ninagawa”』です。 ※マカロンボックスやフールセック(クッキー缶)、トートバッグ等の限定コレクションも展開

普段、淡くやさしいパステルカラーで彩られるラデュレのサロン・ド・テが、この夏は眩い光の中で煌めく鮮烈な極彩色の世界へと変貌。

フューシャピンクを基調とした鮮やかなラデュレx 蜷川実花 – mika ninagawa コレクションが空間内の各所に配置され、訪れる者を「真夏のエデン(楽園)」へと引き込みます。

  

スイーツ文化史:ベル・エポックのパリと「サロン・ド・テ」の開花 

今でこそ女性たちがカフェで紅茶やスイーツを囲み、華やかに語らう風景は日常となっていますが、19世紀のパリにおいてこれは「革命的」な出来事でした。当時のカフェといえば、アルコールやタバコの煙が充満する男性主体の社交場。良家の女性たちが自由に出入りし、寛げる場所は社会的に存在していなかったそうです。

1862年の創業当初はブーランジェリー(パン屋)だったラデュレですが、1871年の火災再建を経てパティスリーへ。

そして1900年前後のベル・エポック期、創業者ルイ=エルネスト・ラデュレの妻 ジャンヌ・スシャール 氏が、「高級パティスリー」と「カフェの心地よさ」を融合させた「女性のための社交場(サロン・ド・テ)」という画期的な空間を生み出しました。同じく1903年には『アンジェリーナ(創業時はルンペルマイヤー)』が誕生するなど、20世紀初頭のパリで花開いたサロン文化。

160年以上の時を超え、現代の「ラデュレ 日比谷店」で開かれている『アフタヌーンティー “mika ninagawa”』もまた、自らの美学を持つ女性たちが集い、五感を咲かせる現代の「サロン・ド・テ」の血脈を正当に受け継ぐ舞台と言えます。

  

【アフタヌーンティー “mika ninagawa” 】 

展開期間:2026年7月3日(金)~9月17日(木) 

提供店舗:ラデュレ 日比谷店 

価格:2名様 18,700円(税込)〜 

内容:マカロン2種(白桃、ローズ)、パティスリー1種(サントノレ・白桃)、セイボリー4種、ミニャルディーズ2種、ウエルカムドリンク、紅茶またはコーヒー ※追加 3,960円(税込)でミニパルフェ2名様分付き 

普段、淡くやさしいパステルカラーで彩られるラデュレのサロン・ド・テが、この夏は眩い光の中で煌めく鮮烈な極彩色の世界へと変貌。フューシャピンクを基調とした鮮やかなビジュアルが空間を満たし、訪れる者を「真夏のエデン(楽園)」へと引き込みます。

テーブルに落ちる“影”までデザインされた立体空間とガストロノミーの共演 

現地取材に訪れて何より息をのんだのが、今回のコラボレーションのために特別に誂えられたティースタンドの美しさです。

従来のオーソドックスな3段スタンドではなく、フューシャピンクの円柱台座から、花々が咲き誇るように広がるシネマティックで立体的な造形。自然光やサロンの照明を受けると、テーブルの上に“お花の形をした美しい影”を落とすという、空間表現を得意とする蜷川氏とラデュレの美意識が完璧に融合した緻密な演出が施されています。 

もちろん、スタンドを彩るメニューもラデュレが誇る高い製菓技術とガストロノミーの真髄が凝縮された逸品ばかり。 

  

世界観を象徴するパティスリー群

メインのパティスリー「サントノレ・白桃」は、可憐なエディブルフラワーを纏い、白桃のジューシーな果汁とローズの上品な香りが口内で優雅に解け合います。青い羽を広げる蝶がプリントされたローズのマカロンや白桃マカロンは、ひと口ごとに楽園の秘密の扉を開けていくような高揚感をもたらしてくれる。 

さらに、口に含むとローズとフランボワーズの華やかな香りがふわりと広がる「ギモーヴ」と、まろやかなコクが果実の瑞々しさを引き立てる「白桃とマンゴーのムース」という2種の甘美なミニャルディーズが揃い、多角的な食感とフレーバーで「真夏のエデン」のストーリーを完璧なものに仕立て上げています。

  

「香水を味わう」ような洗練を極めた4種のセイボリー

花園に見立てられたセイボリー群は、フルーツとハーブ・スパイスの使い方が秀逸。

「帆立と白桃のファルシー」は、アボカドやレモンピールに爽やかなローズのジュレを纏わせ、まるでハイジュエリーや香水を味わっているかのような感覚に。「オレンジとチキンのサラダ」にはオレンジフラワーを、「桃とナデシコのチャツネ」には生ハムとモッツァレラを合わせ、キャビアとマリーゴールドを散らしたコンテチーズに至るまで、味覚のコントラストが見事に計算されています。

グラスの中に咲く儚く気高い「ミニパルフェ」:追加オプション(2名様 +3,960円)

「ミニパルフェ “mika ninagawa”」は、甘酸っぱいフランボワーズのジュレ、ロゼシャンパンのジュレ、白桃ソルベ、苺ソルベが美しくレイヤードされた冷製デセール。

グラスのトップにあしらわれたブルーのチュイルが、まるで儚くも気高く羽ばたく蝶のように全体を締めくくります。ラデュレが長年培ってきたフランス菓子としてのエレガンスをリスペクトしながら、蜷川実花氏のダイナミックな生命力を視覚・味覚・さらにはテーブルに落ちる影の陰影にまで落とし込んだ、今夏最高峰のエンターテインメント・アフタヌーンティーに仕上がっている。

『LADURÉE(ラデュレ)』
ラデュレx 蜷川実花 – mika ninagawa コレクション

https://www.laduree.jp

   

現代の極彩美から、18世紀ヴェルサイユの宮廷美学へ――。

現代アーティストが描く極彩色の楽園で五感を覚醒させたあとは、時空を巻き戻し、18世紀フランスの優雅なる宮廷文化の世界へ。

コラボアフタヌーンティーのもう一つの醍醐味は、このように「全く異なる時代や世界観へ一瞬でトリップできる」点にあります。続いてご紹介するのは、歴史的なアイコンが遺した美意識を、ホテルの確かな製菓技術で見事に紐解いた洗練の一皿です。

  

【2選目】ウェスティンホテル横浜 × 展覧会「マリー・アントワネット・スタイル」

18世紀ヴェルサイユの宮廷美学。時代のファッションアイコンが遺した美意識を味わう

横浜・みなとみらいの洗練されたロケーションに位置し、ウェルビーイングな滞在を提案する『ウェスティンホテル横浜』。同ホテルの23階ロビーラウンジにて、2026年7月17日(金)から10月31日(土)まで提供されているのが、「マリー・アントワネット・スタイル コラボレーションアフタヌーンティー」です。

本コラボレーションは、現在横浜美術館にて絶賛開催中の展覧会「マリー・アントワネット・スタイル」(※8月1日〜11月23日/ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館企画の世界巡回展・日本唯一の会場)との特別連動企画。

フランス国王ルイ16世の王妃であり、世界中のファッションやインテリア、製菓カルチャーに多大な影響を与えたマリー・アントワネット。彼女のドラマチックな人生、ヴェルサイユ宮殿での優雅な暮らし、そして愛した装飾品や自然美から着想を得、伝統的なフレンチの技法と現代的な感性で表現し、見た目や香り、食感に至るまで緻密なこだわりが詰め込まれた至高のアフタヌーンティーに仕上がっています。

  

時代を拓いたスタイル・アイコン:マリー・アントワネットと宮廷製菓カルチャー

「パンがなければお菓子(ブリオッシュ)を食べればいいじゃない」――。

マリー・アントワネットを語る上で欠かせないこのあまりにも有名なフレーバーテキストは、長年にわたり王妃の「愚かさや世間知らず」の象徴として語り継がれてきました。しかし、現代の歴史研究および食文化史において、この発言が彼女自身の言葉ではない(ジャン=ジャック・ルソーの『告白』に登場する別の貴族の言葉の流用、あるいは革命期の反王政派によるプロパガンダ)ことは周知の事実となっています。

当時の食文化背景を紐解くと、この「ブリオッシュ」という小麦・バター・卵を贅沢に使った高級パンは、貧困に喘ぐ庶民にとっては雲の上の存在であり、王妃の真意や日常がいかに民衆と隔絶した「おとぎ話」として象徴化されていたかが窺えます。

しかし、オーストリアのハプスブルク家からわずか14歳でフランス宮廷へと嫁いだ彼女の本質は、決して傲慢な王妃ではありませんでした。

窮屈な宮廷の儀礼や政治的思惑に揉まれる中で、彼女が心の安らぎを求めた場所――それこそが、ヴェルサイユの離宮「プティ・トリアノン」の素朴な自然であり、故郷オーストリアのぬくもりを宿した甘美な製菓文化だったのです。

彼女がオーストリアから持ち込んだ「クグロフ」や、朝食に愛した繊細なヴィエノワズリー(発酵バターを使った焼き菓子パン)は、厳格だったフランス宮廷の食卓に優美で軽やかな「洗練」をもたらしました。

「パンがないなら〜」という批判の裏側に隠されていたのは、政略結婚という重圧の中で自らの感性を慈しみ、食やファッションを通して純粋に美学を追求した一人の女性の等身大の姿。彼女が愛した薔薇の香りや繊細な製菓技術は、200年以上の時を超えた今もなお、現代のガストロノミーや製菓カルチャーを鮮やかに彩る大きな原動力となり続けています。

  

【マリー・アントワネット・スタイル コラボレーションアフタヌーンティー】

提供期間:〜2026年10月31日(土)  (※展覧会チケット付きプランもあり)

提供店舗:ウェスティンホテル横浜 23階 ロビーラウンジ

時間:アフタヌーンティー 11:30〜 / 13:45〜 / 16:00〜(3部制・各100分)

価格

  【通常アフタヌーンティー】平日 8,200円 / 土日祝 9,200円(※土日祝は特製パフェ付き)

  【チケット付きプラン】平日 10,200円 / 土日祝 11,200円

 ※表記料金はすべて税・サービス料込み

 ※平日限定オプショナル特製パフェ +800円(要事前予約)

  

パティシエの技と香りの演出が冴え渡るスイーツ&焼き菓子

18世紀の宮廷美学を、伝統的なフランス料理の技法と現代の感性で紐解く。
ウェスティンホテル横浜 サラ・マディガン総料理長が語ったのは、素材と物語をひとつに紡ぎ上げる『職人技』への揺るぎないこだわりであった。

メニューは「視覚・味覚・香り」のすべてでマリー・アントワネットの華麗な世界観を再現。伝統的なフランス料理の技法に旬の食材をあわせ、宝石やローズの要素を優雅に溶け込ませています。

テーブルへと運ばれるのは、グラスの縁にシロップをコーティングし、ココナッツパウダーと金粉をあしらった爽やかなウェルカムドリンク「ヴェルサイユ・クチュール」。

グラスを傾けた瞬間から、王妃の華麗なる物語の幕が上がります。

象徴的なヘアスタイルと宝石を象ったスイーツたち

王妃の代名詞である高さのあるヘアスタイルをモチーフにした「“王妃の髪結い” ラズベリームース ローズクリーム」は、優雅なローズの香りと甘酸っぱいラズベリーが重なる繊細な味わい。

宮廷を彩った宝飾品を着想源とした「“ビジュー ド ヴェルサイユ” バニラババロワとブルシエルシート」や、王冠を模し旬の果実を添えた「“ジュエルクラウン” マンゴープリン ココナッツジュレ パイナップルジュエル」など、きらびやかな宝石の世界観を見事に表現しています。

技術が光る可食装飾と名作パティスリー

王妃の佇まいを伝える「“王室の肖像画チョコレート”」など、スイーツの一部には職人技を感じさせるチョコレート製の食べられる装飾やロゴプリントが施され、細部まで徹底した美意識が貫かれています。また、小トリアノン宮殿の庭園をイメージし、ブルーベリーとチーズの爽やかな酸味を効かせた「“エクレール デュ プティ トリアノン”」も必食の仕上がりです。

土日祝限定(平日はオプション):「香水文化」をパフュームボトル演出で魅せる特製パフェ

特製パフェ「“王妃の香り” フリュイルージュクリーム 巨峰ジュレ ライチソルベ」は、マリー・アントワネットが愛した香水文化に着想を得た一品。パフュームボトルを用いたライブ感あふれる演出とともに提供され、まるで宮廷のサロンに招かれたかのような幻想的な体験をもたらします。

宝石と自然美が交差する「高貴なセイボリー」と「ART OF TEA」のペアリング

甘美なスイーツを引き立てるセイボリーにも、真珠やバラ、王妃の庭園をモチーフにした物語が敷き詰められています。

王妃が愛した真珠をモチーフに、旬のホワイトコーンムースに金箔をあしらった「ブラン&ジョーヌドール」、紅心大根のラビオリでグラブラックスサーモンを包んだ「ルージュ・フォンセ」、三浦スイカとモッツァレラにエディブルフラワーを浮かべた「ブラン&ルージュ ア‘フルール」など、5種の豊かな味わいが揃います。

お飲み物は、ロサンゼルス発のオーガニックティーブランド「ART OF TEA」から、シーズナルティー「ローズブラック」や「ホワイトローズ」、「レモンメレンゲ」など多彩な銘柄をフリーフロー(70分 L.O.)で。

8月1日(土)からは、横浜美術館で開催中の展覧会鑑賞チケットがセットになった特別プランも好評提供中。ホテルで王妃の美意識を味覚から堪能したあと、みなとみらいの涼やかな風を感じながら展覧会へと向かい、その足跡を辿る――。夏休みやお盆シーズンの特別な1日を彩るプレミアムな体験として、ぜひおすすめしたいルートです。

ウェスティンホテル横浜

https://www.marriott.com/ja/hotels/tyowy-the-westin-yokohama

  

五感で鑑賞する「アフタヌーンティーという名のアート」

ただ甘いものを味わい、ティーカップを傾ける――。今やアフタヌーンティーはそんな静かなお茶会の枠組みを軽々と飛び越え、アーティストの熾烈な情熱や、数百年の歴史が織りなす物語の中へと全身でダイブする「没入型の鑑賞体験」へと劇的な進化を遂げています。

スタンドという小さな舞台の上に一皿一皿が配置されたとき、そこにはパティシエたちの緻密な計算と、対象への深いリスペクト(解釈と翻訳)が宿った“食べる芸術作品”が完成します。

ラデュレ×蜷川実花が魅せる、現代アートの色彩とパリの伝統が交差するセンセーショナルな真夏のエデン。

ウェスティンホテル横浜×マリー・アントワネット展が紡ぐ、時空を超えて宮廷の優雅さに触れる歴史ロマン。

一口味わうごとに、日常の喧騒や夏の暑さはどこか遠くへ去り、あなたの五感は色鮮やかに研ぎ澄まされていくはずです。

眩い日差しが注ぐ夏の盛り。シェフたちの溢れんばかりの情熱と美学が交差する特別な一皿を鑑賞しに、ぜひ涼やかで優雅な非日常のサロンへ足を運んでみてはいかがでしょうか。そこから始まるのは、あなたをまだ見ぬストーリーへと誘う、心奪われるティータイムの幕開けです。