|特別企画|新型コロナウイルス感染拡大。スイーツ店はどう立ち向かう? ~第1回 デリバリーで顧客ニーズを掴む~

洋菓子の企画・製造を請け負う株式会社ランビック(東京都江東区)にて、企画提案、商品開発に携わる木村達哉さん。新型コロナウイルス影響により取引企業の休業が続くなか、UberEats(ウーバーイーツ)などのデリバリーを強化することで、売上確保に成功している。そんな木村さんに、これからのスイーツ店の販促のヒントをもらった。

これからの時代は来店を待っているだけじゃいけない

――まずは木村さんが務めていらっしゃる会社について教えてください。

弊社は全国のカフェやレストラン、ホテルなどに手作りの洋菓子を卸すOEMのケーキ工場です。コンベアのような機械を使用して製造するのではなく、パティシエの手作りで一つひとつ丁寧にかつ大量生産で作り上げていきます。クライアントの希望をパティシエがヒアリングして、希望に沿った手作りのケーキを可能な限り低価格で提案し、企画、製造、物流まで一手に引き受けています。また、工場1階にはショーケースに並べたケーキを販売するケーキショップとこだわりのコーヒー豆を使用したカフェも併設しています。

――新型コロナウイルスの影響は大きいかと思いますが、今の営業状況はいかがでしょうか?

卸の部門はクライアントの店舗が休業になってしまいほとんど稼働しておりませんが、店舗は朝の10時から夜19時まで営業しています。店内には1組ずつご案内をして、少しでも危険を排除できるようにと対策しています。また、かねてから導入していたUber Eats※の他に自社デリバリーも一時的に始めて、電話注文での配達を受けています。

特に最近は、弊社がもともと卸業ということで、普通の洋菓子店様よりも多くの材料を仕入れていたこともあり、乳業メーカーさんなどから余ってしまった牛乳やクリームを何とか使ってもらえないかと相談されます。そんな時は商品を一手に引き受けて、いつもより安い価格でシュークリームを販売したり、特別な商品を作ったりして、乳製品の消費、食品廃棄を減らせるような協力もしています。

UberEats(ウーバーイーツ)とは
レストランやカフェなどの宅配メニューを、配達パートナーが届けてくれるアプリを使ったデリバリーサービス。店舗側が配達員を用意する必要がないことから、さまざまな飲食店が加盟しており、取り扱い料理ジャンルが豊富なところも利用者のメリットのひとつ。ケーキやアイスクリーム、パン、タピオカなども配達している。出店するには加盟店登録が必要。包材費、売上に対してサービス料や配送手数料といったコストがかかるため、緻密な計算が必要といえる。
https://www.ubereats.com/jp

――集客・売上向上のために気をつけていることや、先程お話された自社デリバリーのように新たに始めた試みについて教えていただけますか?

Uber Eatsのページを充実させ、よりお客様に求められるように工夫しています。

また、臨時的に自社デリバリーもスタートさせ、2,000円以上の注文でご自宅まで専属のドライバーがお届けするサービスを始めました。それに伴い、以前から少しだけやっていたランチボックス(料理)のバリエーションを増やし、店頭販売とウーバー、自社デリバリーのメニューに入れ込みました。

自身が調理師免許を持っていることと、この情勢なのでパティシエ=ケーキを作るという固定概念は全くいらないと考えています。

――Uber Eatsについても詳しくお聞きしたいのですが、始めたきっかけは何ですか?

きっかけは近隣のUber Eatsの店舗にスイーツを取り扱っている店がほとんどなかったので、スイーツ専門店として参入したら面白いのではないかと思い始めました。

ちょうど私たちが参入した時期はまだ店舗がそんなに多くなく、そういう意味では早くから始めていてよかったと思います。

始めてみた当初、思っていた以上にホールケーキの注文が多く、バースデーや記念日での需要にUber Eatsを使用している方がたくさんいるんだと実感しました。アプリから手軽に注文できることもあって、これからの時代は店舗で販促をして来店を待っているだけじゃいけないんだなと強く感じました。

――このような状況なので参入を検討している方もいらっしゃると思うのですが、オススメしますか?

オススメしたい販促の一つだと思います。今回の新型コロナウイルスの影響で非常事態宣言が発令されてからUber Eatsの売り上げは3倍~4倍になっています。

新型コロナウイルス終息後も、お客様は手軽に注文できるUber Eatsを今まで以上に利用していただけると考えられるので、早めの参入がおすすめです。

ただ、店舗運営と同じで中途半端にやるくらいならやめておいたほうがいいと考えます。

商品の魅力が伝わるような写真を撮り、メニュー説明を入力する、原価と手数料を計算する。この作業を定期的に行う労力がかかります。注文が入った時の店舗オペレーションも考えなくてはいけません。

とりあえずやってみよう!で始めても、新商品や新しい提案がお客様にできないとすぐに飽きられてしまい、注文件数も減ってしまうと思います。特に今は多くの業態が参入しているので、しっかりとした意志で続けないと埋もれていってしまうと思います。

――なるほど。結果を出すには一つの店舗を運営するくらいの心持ちが必用なのですね。とても参考になりました。では最後になりますが、スイーツ業界で働く方にメッセージをお願いします。

今、外食業界、洋菓子業界は苦しい状況に立たされていると思います。私たちも微力ながら業界を盛り上げていけるように工夫して日々営業しています。今後はデリバリーのみではなく、遠方への商品発送なども取り組んでいきたいと今計画中です。みなさん、がんばっていきましょう!!

――ありがとうございました。


おすすめアイテム

工場直営の「ブリスカフェ Produce by Ramvic」で販売しているおすすめスイーツ。一部商品はUber Eats の「ランビックスイーツデリ」でも注文可能。

クッキーシュークリーム

サクサクのクッキーシューに特製カスタードクリームをたっぷり詰めた一番人気の商品です。

ティラミスロール

定番のティラミスをロールケーキに仕上げました。最上級の生クリームとマスカルポーネを使用した贅沢なティラミスクリームをこだわりの豆を挽いたエスプレッソで作ったシロップをたっぷりしみこませたロールシートで巻き込みました。

バナーヌショコラ

キャラメル風味のチョコレートムースの中にバナナのミルクチョコクリームを閉じ込めて、アクセントにアーモンドを入れました。チョコ好き、バナナ好きにはたまらない一品です。


プロフィール|

木村達哉さん

服部栄養専門学校の調理師科を卒業後、コンクール等でも有名なシェフの下、千葉県にあるシュークリームが有名な個人店で修業を積む。その後埼玉県内の洋菓子店で見分を広め、製菓長として商品開発や企画提案、店舗運営を学ぶ。その後コンクール等にも挑戦しながら、大手ハワイアンカフェチェーンのスイーツメニュー開発を一手に担う。その経験を活かし現在は洋菓子のOEM工場にて様々な企業のカフェやレストラン、ホテルなどにスイーツの企画提案、商品開発を行っている。https://www.instagram.com/kimura2248ramvic/