東北の岩手は、寒さが厳しく、りんごの栽培に向いています。
岩手で暮らす私も、りんご畑の景色はとても身近にあって、赤いりんごの実がなっている光景は普段からよく目にします。
しかし柑橘となると、北国いわては栽培に向いていないためか、盛岡市周辺で柑橘類が実っている光景は見たことがありません。
学生時代を埼玉で過ごした私は、広葉樹に柑橘類が実っているのを見て、興奮して指差したものです。
ところが、なんと。岩手にも柑橘類が実る地域があったのです!
海沿いの町、陸前高田市
盛岡から車で約2時間。岩手県陸前高田市は、三陸の南に位置する沿岸の町です。穏やかな広田湾は、牡蠣やホタテ、ワカメの養殖が盛んです。
その陸前高田市には、ゆずの木があります。
ゆずの産地は、高知県や徳島県といった西日本に多く分布しています。
東北の岩手県で柑橘が実ることを知った時、とても驚きました。
寒い岩手県の中でも県南の沿岸に位置する陸前高田は、降雪も少なく、温暖な気候。
ゆずは、柑橘類の中でも比較的寒さに強いため、陸前高田市でもたわわに実をつけることができるのでしょう。
「北限のゆず」とは
ゆずの木は200年以上前から、陸前高田に生息していました。
温暖で日照時間が長いことから、柑橘類の中でも寒さに強いゆずの木が、陸前高田の気候に適していたのでしょう。
市内の人は、昔から庭木として植えられていたため、ゆずの木がある風景は当たり前だと思い、市の特産物としての認識を持っていませんでした。
それが、北限であることにも全く気づいていなかったのです。
2011年の東日本大震災では、陸前高田市に大きな津波が押し寄せました。
風光明媚な高田松原、商店街、道の駅、ショッピングセンター。
それまで当たり前にあった日常の風景が、一瞬にして津波にさらわれてしまったのです。
奇しくも、北限のゆずを使って商品を作れないかと、料理研究家に話を持ちかけた頃でした。
北限のゆずを使ったスイーツ
北限のゆずを使った商品開発の相談を受けていたのは、盛岡市内でパンと洋菓子の教室を開いている料理研究家の小野寺惠さんでした。
初めにできた商品が「ゆず塩」でした。
岩手県の野田村産の天然塩とゆずを使った、ゆずの香りがさわかやな「ゆず塩」が誕生すると、色々なスイーツも開発されました。
どれも三陸の潮風と、燦々と降り注ぐ太陽の下で育った陸前高田の「北限のゆず」を使った、爽やかな香りのスイーツたちです。
2020年2月に行われた「北限のゆずを楽しむ会」で小野寺惠先生はこのようにおっしゃいました。
ゆずは200年も前から、陸前高田に自生していました。この「自生」していたということは、とても意味があることだと思います。ここが、自生する力のある土地であること。それは、他の土地にはないここだけの魅力なんです。震災のあと、商品開発のため陸前高田を訪れた時は、街がすっかり無くなっていました。とにかく何か商品を生み出して「前を向いて行こう」という想いで、みなさんに使ってもらえる「ゆず塩」を考案しました。それからマドレーヌやシフォンケーキなどのスイーツが生まれました。これからも、皆さんから北限のゆずが愛されることを願います。
クッキー、シフォンケーキ、パウンドケーキ、フロマージュ、ようかん、マーマレードなどの「ゆず塩スイーツ」もたくさんありますので、北限のゆず研究会のホームページをチェックしてみてください。
北限のゆず研究会
http://www.hokugen-yuzu.jp/
北限のゆず商品紹介
http://www.hokugen-yuzu.jp/products/
北限のゆず研究会では、毎年11月にゆずの収穫を手伝うボランティア「ゆず狩りサポーター」を募集しています。
樹齢50年以上を超える大木も多く、トゲもあるゆずの木。人の手は多いほど助かります。
実際にやってみると、参加者同士の交流も生まれ、とても楽しいです。