※安孫子宏輔さんのCandy Boy卒業に伴い、“安孫子宏輔(Candy Boy)の「あびこ菓子」”を再編集して公開しております。
安孫子宏輔さんのスイーツ連載「あびこ菓子」。 すっかり秋めいて、栗スイーツが恋しい季節になりました。今回はモンブランをテーマにお届けします。
第16回 安孫子さんとモンブラン
――秋に注目されるスイーツといえばやっぱりモンブランがですが、一年中通して食べられる定番でもありますよね。
季節性のあるスイーツなので、秋になるといろんな種類が出てきますが、まぁ、常に店頭にあります(笑)。
僕の小さいころは、甘露煮を使った黄色のモンブランは結構あったと思うんですが、最近は茶色が主流ですよね。
――そうですね。
黄色いのって今も見かけますか?
――自由が丘には黄色いモンブラン発祥のお店「モンブラン」があるんですが、今でも大人気です。他のお店ではなかなかレアな存在になりましたが。
あと、これは個人的な思い出も影響してるんですが、黄色いモンブランは「お父さんが食べるケーキ」というイメージがあって、子供時代は食べなかったんですよね。
確かにお父さんのイメージがあるかもしれない。ちょっと大人?
――なので「アンジェリーナ」の茶色のモンブランを初めて食べたときは驚きましたね。マロンクリームと生クリームとメレンゲのおしゃれな組み合わせに!
最初に茶色を見たときは、これもモンブランなんだって思いました。
「アンジェリーナ」が日本に進出したのがきっかけで、茶色いのが広がって、今ではすっかり茶色が定着しましたよね。
――モンブランもだいぶ進化したというか、栗に限らず、かぼちゃやいちごなど、モンブランの口金で絞ったものはモンブランと言いますし、いろいろ種類が増えましたよね。
確かに。
オーソドックスな形。アルプスの最高峰をイメージしたこの形から、だいぶ崩れてきたかもしれないですね。
――話は変わって、栗以外で秋に必ず食べるスイーツはありますか?
秋の味覚と言うと、さつまいもやかぼちゃですよね。
さつまいものアイスとか好きです。ジェラート屋さんにあったら選んじゃいます。
――さつまいものジェラートは買ったことがないですね。
間違いないですよ。
――スーパーにある焼き芋マシンの焼き芋は買いますが。
僕、焼き芋は買わないです!
焚き火で作るものだというイメージがあるんですよね。
おじいちゃんが畑をやっていたので、さつまいもをアルミホイルに包んで焚き火の中に入れて作っていたんです。
――最高においしいやつですね。
あれはベストですよね。
焼き芋とは焚き火で作るものなので、スーパーのとは違うと思っています(笑)。
――他に好きなものはありますか?
もともと芋・栗・かぼちゃのスイーツは好きだったので、ドトールのかぼちゃのタルトはよく食べていました。
大学生のときに、よくカフェで勉強をしていたので、秋に見かけると食べなきゃという気持ちになりましたよね。
――かぼちゃは煮物とかもお好きでなんですか?
かぼちゃの煮物に対して、特別な感情は抱いたことはないのですが(笑)、スイーツになった途端に好きになります。
料理よりもちょうどいい距離感になったなと。
小さいころはスイカが苦手だったんですけれど、スイカバーは大好きだったのと一緒で、元にしたものよりも、ちょっと離れた感じになるのがベストということかな。
――そう思うとモンブランも、栗そのものからちょっと離れた感じですよね。
確かにモンブランはすごく飛躍しましたよね。
焼き栗ももちろんおいしいですけれど、モンブランを食べると「うわぁ、おいしい!」ってなるじゃないですか。
そう考えるとパティシエさんってすごいですよね。素材の味をもっとおいしいところまで持っていくので。
――そうですね。モンブランはいまだに根強い人気ですよね。
モンブランは「ケーキ買ってきたよ~」の5個の中に絶対にいるじゃないですか。
――確かに、お土産でいくつかケーキを買っていくときには必ず1個入れますよね。
いいポジションだなと思います。名脇役じゃないですけれど、絶対に必要な存在。
だからタピオカとかよりは絶対に息は長いですよね。ブームになって去るのではなく、ずっと人気ですからね。
――そうですね。では最後にモンブラン回の締めをお願いします。
モンブランは一番いいポジションのケーキです。
敵も少ないと思います。
「心得てる」じゃないですけれど、1位にはならないけれど、ずっと活躍し続けるというか。
1位はやっぱりショートケーキだと思うんですよ。ケーキの絵文字にもなっているくらいなので。
でも、モンブランもずっと愛され続けるポジションにいますよね。
モンブランみたいな俳優……「モンブラン俳優」になりたいと思います。
――まとまりましたね(笑)。
今となっては男性もスイーツを食べるじゃないですか。
でも、甘いものとかかわいいものを食べない男性が多かった時代に、だいぶ先駆け的なスイーツだったと思うんですよね。
かわいらしい色とりどりのケーキが並んでいる中で、少し渋めのモンブランなら食べていてもキャピキャピしていないというか……モンブランに失礼かな(笑)。
もともと和のテイストがあるので、より受け入れやすかったんですかね。
緑茶にも合うと思いますし。
だから男性のスイーツ進出を進めてくれた立役者かな。
でも、お父さんのイメージがあるというのは、そうかも知れない。
お父さん方にアンケートをとってみたいですね。ケーキ屋さんで何を選ぶのか。
今では抵抗がないかもしれないですけれど、ちょっと前まで「スイーツ男子」というだけで話題になりましたからね。
――もしかすると歴史を作ったスイーツかもしれないですね。
先駆けかちょっと早すぎたのか(笑)。
モンブランに救われた男性は多かったのだと思います。
――そうですね。ありがとうございます。
撮影|伊藤 駿
※安孫子宏輔さんは2022年12月31日をもって、Candy Boyを卒業しております。