
東京の空を衝く麻布台ヒルズ 森JPタワー。その33・34階に位置する「Hills House」へと向かうエレベーターを降りた瞬間、私たちは単なる展望台ではなく、巨大な「味覚の実験場」に足を踏み入れることになる。

2026年のゴールデンウィーク、ここで産声を上げる「スカイパフェ2026」。
これは、移ろいゆく空の色を借景に、グラスという名の小宇宙に美食の秩序を閉じ込めた、野心的なガストロノミー・イベントだ。

このプロジェクトの核となるのは、現代フランス料理界の巨匠・三國清三氏のフィロソフィーを継承するグランビストロ『Dining 33』のシェフパティシエ、浅井拓也氏らによる精鋭チームである。

今回、パティシエとしてのひとつの大きな節目を迎えつつある浅井氏と、その溢れ出す感性を共有し、共に高みを目指すチームの熱量は、単なるスイーツの枠を超えた「一皿のデセール」としての完成度を追求。
地上150mという非日常の浮遊感を、単なる「景色」としてではなく、ゲストの味覚を鋭敏に研ぎ澄ますための「増幅装置」へと昇華させたのだ。
なぜ、このパフェは一口ごとに「風景」を変えるのか? なぜ、最後の一口で完璧な余韻が完成するのか?
そこには、『Dining 33』が誇る個の才能とチームの執念が導き出した、既存の概念を覆す緻密な製菓理論――いわば「味覚の時間軸設計」が隠されている。甘美なる空中散歩へと誘う、その3つのマスターピースの深層を、今ここで解き明かしたい。
緻密な構成美が描く味覚の軌跡

苦味の解像度を上げる:『抹茶と初夏のチェリーパフェ』
抹茶を「和」の記号ではなく「複雑なプロファイルを持つ香料」として捉えた本作。最上部のアメ飾りが、これから始まる繊細な食感の層を予感させる。

・酸味の多層化(チェリー×アプリコット): 初夏の訪れを告げる最上部の「チェリーの木苺ゼリーがけ」が放つ鮮烈な酸味に対し、中層のフランス産アプリコットコンポートが持つ重厚な有機酸をぶつけることで、抹茶のタンニンに負けない骨格を形成。この酸の「厚み」が、全体の解像度を一気に引き上げる。
・香気成分のブリッジ(コーン茶): 注目したのはボトムに配された抹茶バニラアイスから「コーン茶ゼリー」への推移。抹茶の「覆い香(おおいか)」とコーン茶の「焙煎香」は共通の香気成分を持っており、中盤の濃厚な抹茶クリームから、最下層「アーモンドソース」を配し、抹茶の青い香りをコーン茶の香ばしさで締め、アーモンドのコクで余韻を伸ばす。終盤の清涼感あるフィニッシュへと、違和感なく味覚を誘導する。この「香りのブリッジ」こそが、レストラン・パティシエが仕掛ける設計の極致である。
融点とテクスチャーのコントラスト:『苺×トリプルショコラパフェ』
斜めに配された「ミルフィーユパイ」の圧倒的な造形美が目を引くが、ショートケーキのモダンな再構築を掲げた本作の実態は、「口内温度による時間差攻撃」を意図した設計となっている。

・ショコラの三位一体: 「ホワイトチョコパウダー(即溶)」、板状の「ルビーチョコレート(食感)」、そして「テリーヌショコラ(重厚な溶け感)」。この3つの形態は、舌の上で溶け出すタイミングが意図的にズラされている。「フロマージュブランムース」の軽やかな酸味で繋ぎ、苺の果汁が口内で弾ける瞬間に、常に異なるショコラのプロファイルが重なり合う。
・「箸休め」の機能美: トップのパイと共に、最下層には「乳酸菌飲料とミルクブランマンジェ」を配置。パフェ後半で冷えた味覚を、どこか懐かしい乳酸菌の優しさと「いちごソース」の瑞々しさでリセットさせ、最後の一口まで飽きさせない。
エキゾチシズムと伝統の融合:『完熟マンゴーTea timeパフェ』
フランス料理の伝統的なアプローチである「塩とスパイスによる素材の輪郭強調」が見事に体現された一杯。

・カルダモンとゲランドの塩: 完熟マンゴーの重厚な甘みに対し、清涼感ある「カルダモンヨーグルトアイス」をぶつけ、さらにフランス産「ゲランドの塩」を加えた「キャラメルソース&ゲランドの塩」でミネラル感を加える。この対比がマンゴーのミネラル感を強調し、味わいに圧倒的な奥行きを与えている。
・テロワールを感じるフィニッシュ: 中層の「ザクザクシュトロイゼル」による咀嚼の快感から、ラストの「紅茶ジュレとざくろ」へと。マンゴーの熱量を、紅茶のタンニンとざくろの食感で引き締め、優雅なティータイムを終えたかのような、清々しい余韻で幕を閉じる。
「夜パフェ」という新機軸:液体系ペアリングの深化

本イベントの真髄は、18:00以降に加速する。日が沈み、東京タワーが琥珀色の光を放ち始めると、パフェは「オリジナルカクテル」とのペアリングにより、さらなる変貌を遂げる。

・フレンチパッションフィズ: ラムとコアントローの余韻が、マンゴーパフェのスパイス香を増幅。
・糀(こうじ)とうきび: 玉蜀黍(とうもろこし)の香ばしさが、抹茶パフェのコーン茶ゼリーと見事に共鳴。
・ミルキーフランボワーズスパークリング: 乳酸菌飲料のニュアンスが、苺パフェのブランマンジェをより官能的に昇華。

一般的に、糖度の高いパフェにアルコールを合わせるのは至難の業とされるが、浅井シェフらはパフェ自体の「キレ」を重視することで、リカーが持つ酸味や苦味との共生を可能にした。パフェがデセール(皿盛りデザート)の枠を超え、大人のための「嗜好品」へと昇華する瞬間。

この夜の官能的な体験こそが、麻布台ヒルズが提示する「スカイパフェ」の本質かもしれない。
文化的意義:Dining 33が挑む「食育」のフロンティア
最後に触れなければならないのが、Dining 33で実施される「フルコースデビュープラン」である。
小学生以上を対象とした「キッズサンデー」も用意され、34階でパフェという親しみやすい入り口を提供し、33階で本格的なフランス料理の伝統へ誘う。このシームレスな体験設計は、未来の美食家(グルマン)を育てるための、都市型レストランの理想的な在り方と言える。

敷居を「下げる」のではなく「橋を架ける」: 小学生から19歳までを対象とした50%オフというプランは、単なる集客策ではない。一流の空間、サービス、そして技術に若いうちから触れさせるという、森ビルと三國精神が共鳴した「文化投資」である。
また、34階で「パフェ」という親しみやすい入り口を提供し、33階で「コース料理」という伝統の世界へ誘う。このシームレスな体験設計は、未来の美食家(グルマン)を育てるための、都市型レストランの理想的な在り方と言える。

「スカイパフェ2026」は、麻布台ヒルズという場所が持つ「垂直の都市」というコンセプトを、そのままパフェの層(レイヤー)へと落とし込んだ野心作である。
『Dining 33』の誇りを胸に、パティシエとしてのひとつの集大成を刻もうとする浅井シェフらによる、研ぎ澄まされた「今」この瞬間の技術。それを150mの絶景と共に崩していく背徳感と多幸感。このゴールデンウィーク、食のプロフェッショナルであれば、この「計算されたカオス」を体感しない手はない。
パフェの層(レイヤー)の一つひとつに隠された物語を読み解く準備はできただろうか。この春、東京で最も「高い」場所にある美食の解答を、ぜひその舌で確かめてほしい。
■ イベント詳細情報
スカイパフェ2026
- 開催期間: 2026年4月29日(水・祝)~5月10日(日)
- 営業時間: 11:00~21:00(L.O. 20:00)
- 場所: 麻布台ヒルズ 森JPタワー34階 Hills House内 「Sky Room Cafe & Bar」
- メニュー・料金:
- 完熟マンゴーTea timeパフェ:¥2,400
- 抹茶と初夏のチェリーパフェ:¥2,200
- 苺×トリプルショコラパフェ:¥2,200
- キッズサンデー(12歳以下限定):¥1,200
- オリジナルカクテル(ペアリング):¥1,500~
- ※別途サービスチャージ おひとり様 ¥500
Dining 33「お子様フルコースデビュープラン」
- 開催期間: 2026年4月29日(水・祝)~5月10日(日)
- 場所: 麻布台ヒルズ 森JPタワー33階 「Dining 33」
- 対象: 小学生~19歳以下(保護者同席、コース注文の方)
- 特典: 対象のお子様のコース料金 50%オフ(大人1名につきお子様2名まで)
- 備考: 未就学児は個室利用にて対応可(個室料別途)